米Microsoftは2004年12月,米GIANT Company Softwareを買収して優秀なスパイウエア対策ソフトを手に入れた(既報)。このとき,Microsoftはこの技術を大企業向けの加入契約ベースで提供するサービスの基礎に使うと発表した。

 Microsoftは10月16日,この製品に関してより詳しい情報を明らかにした(関連記事)。「Client Protection」という名称のサービスに,GIANT製のスパイウエア対策技術と,もっと前に買収していたルーマニアGeCad Software製のウイルス対策ソフトウエアを組み合わせて使う予定である。

買収技術で新プロダクツを開発
 「私たちのユーザーは,常に懸念を抱いていると聞いている」。Microsoftでエンタープライズ・アクセスのためのプロダクト・マネジメントとセキュリティ製品部門の担当ディレクタであるPaul Bryan氏は最近のブリーフィングで私に語った。「第1に,そういった会社は中央で管理可能なマルウエア(不正ソフト)を防ぐ効果的ソリューションを持っていない。それらの会社は,自分たちが管理すべき製品を少なくしたいと思っている。さらに自分たちの環境をセキュアにするような,よりよい見通しを持ちたいと考えている」(Bryan氏)。

 Client Protectionはこうした懸念に答えようとしている。GIANTとGeCad買収で得た技術を使い,Microsoftは現在登場しつつある驚異だけでなく,私たちが直面している電子的な脅威,つまりスパイウエアやルートキット,昔からあるウイルス——などと戦うマルウエア対策エンジンを作ったのだ。

Client Protectionの設計思想
 Microsoftのコンシューマ向けマルウエア対策サービスである「Windows OneCare Live」(現在ベータ・テスト中)について聞いたことがあれば,これらの製品が同じ機能を備えていると思うだろう。しかし,この2つは完全に別の製品だ。OneCare Liveが一般ユーザー向けの自動化された購読ベースのサービスになるのに対して,Client ProtectionはActive Directory(AD)ベースで使用する非常に管理しやすい製品になっている。

 つまり,Client Protectionは待望の管理コンソールとクライアント・アクセス機能を備え,多忙なIT担当者向けに特別設計された製品になるのだ。「みんなマルウエア対策にかかる時間を減らしたいと思っている」とBryan氏は述べた。そこで今回の製品は,レポートと警告を出す機能は備えるが,管理者をげんなりさせるほど多くの量ではない。「私たちは,デフォルトでくどいレポートを管理者へスパムするつもりはない」(Bryan氏)。

 一方で,この製品は現状と今後の傾向と一緒に,どんな状況でアクションを起こす必要があるかという情報を提供する。「いくつかのマルウエアは望まれないし,いらいらさせるものだが,ほとんどの人はそのソフトウエアの詳細を知る必要はない。だが,ある種のマルウエアは現実に悪意に満ちている。管理者たちは(その手の攻撃が起きたら)詳しく知りたいと思うだろう」とBryan氏は付け加えた。

ADやグループ・ポリシー,WSUSを活用
 Microsoftの製品であることからして,Client Protectionはあなたが既に使っている技術を利用するはずであり,あなたの環境を再設計する必要はないだろう。Active Directory(AD)とグループ・ポリシーを統合し,実質的にはどんなソフトウエア配布システムも利用できるだろう。だが,まだあなたがソフトウエア配布システムを導入していない場合は,「Windows Server Update Services(WSUS)」を利用することになる。

 Microsoftは,年末までにClient Protectionのベータ版を一部のユーザーに提供する予定である。さらに同社は,製品版を2006年上半期に出荷したいと考えている。この製品は,サーバー側には,Windows Server 2003(Service Pack 1適用)またはWindows 2000 Server(SP4適用)を必要とし,守れるマシンとしては,Windows 2000(SP4適用)やWindows XP(SP2適用)が稼働するクライアントPCと,Windows Server 2003(SP1適用)ベースのファイル・サーバーがある。将来Client Protectionは,「Windows Vista」と「Longhorn Server」(開発コード名)もサポートする。

クライアント向けスパイウエア対策ソフトの近況
 価格とライセンス体系は,まだ決定していないが,以前はこのサービスを購読契約方式で提供したいと言っていた。つまり,これは現在ベータ版を配布している管理機能のないクライアント向けの「Windows AntiSpyware」のように無償とはならない。このソリューションについて言えば,何人かの読者が私に,なぜまだベータ版なのかを質問してきた。Bryan氏は私に語ったのは, 同社が今Windows AntiSpywareの製品版のリリース準備のために,内部でたくさんの作業をしている最中だという。

 「現在実装されている技術は,私たちが求める最低限の品質に達していない。例えば,私たちはそれを管理者モードで走らせる必要がなくなるところまで完成度を上げたいと思ったので,その製品のコンポーネントを別の製品に使っているし(私の他の情報源によると,この技術はWindows Vistaにも実装されるそうだ),今の段階でこの製品はスパイウエア問題の多くを解決するのに十分な内容と,これから現れる問題にも対応できる柔軟性を備えている。しかし,私たちはそれを顧客がMicrosoft製品に期待するだけの品質まで鍛え上げているのだ」。

 結局Bryan氏は,Windows AntiSpywareがいつ完成するかを示唆しなかった。

【編集部注】米Microsoftは,「Windows AntiSpyware」と呼んで,開発を進めていたスパイウエア対策ソフトを「Windows Defender」という正式名称に決めた(既報)。