Windows Updateができない原因
 これらは特別なファイルやフォルダなので暗号化するユーザーは少ないだろう。注意したいのは,Documents and Settingsフォルダ全体を暗号化してしまうことだ。これだけでWindows Update(Microsoft Updateを含む)ができなくなってしまう。

△ 図をクリックすると拡大されます
図8●Windows Updateが失敗している画面
 実際に,Documents and Settingsフォルダ全体を暗号化した状態でWindows Updateを実行すると,図8の画面のように修正パッチのダウンロードに失敗する。Windows Updateサイトで[更新履歴の表示]から,エラーの状態を確認すると,エラー・コードは「アクセス権に関するトラブル」を示す「0x80070005」になっていた。

 Documents and Settingsフォルダにあるのは,マシンにログオンする各ユーザーの情報を格納するフォルダだけではない。全ユーザー共通のプロファイルを保存する「C:\Documents and Settings\All Users」(以下All Users)や,新規に作成するユーザーの標準のプロファイルを保存する「C:\Documents and Settings\Default User」(以下Default User)といった共通のフォルダもある。

 ユーザーがDocuments and Settingsフォルダ全体を暗号化すると,これら共通フォルダも特定のユーザーの権限によって暗号化され,ほかのユーザーやシステムが利用できなくなる。

 Windows XP SP2以降のWindows Updateでは,修正パッチのダウンロードやインストールは「Windows Update Agent」が担当している。これはシステム権限で動作しているほか,Windows Update実行時にAll Usersの下層にあるフォルダにアップデートに関する情報を書き込んでいる。

 Documents and Settingsフォルダを特定のユーザーが暗号化していると,Systemアカウントで動作するWindows Update AgentはAll Usersフォルダにファイルを書き込めない。そのため,Windows Updateはエラーになるのだ。

アプリのインストールも失敗
 暗号化の場所に関する前述のルールを守っていても,「アプリケーションがインストールできない」というトラブルが発生することがある。

△ 図をクリックすると拡大されます
図9●アプリケーションのインストールに失敗した画面
 トラブルが発生するのは,拡張子がmsiであるアプリケーションのインストール・パッケージ(Windowsインストーラ・ファイル)を利用する場合だ。msiファイルが暗号化されていると,インストールは失敗する(図9)。その理由もアクセス権にある。

 msiファイルをダブル・クリックすると,Windowsインストーラというシステム・コンポーネントが起動する。その後のファイルの展開やコピーなどは,Windowsインストーラが実行する仕組みだ。しかしWindowsインストーラはシステム権限で動く。msiファイルが暗号化されていると,Windowsインストーラはmsiファイルの中身にアクセスできない。そのため,アプリケーションのインストールが途中で失敗してしまうわけだ。

 ユーザー・プロファイル・フォルダを暗号化している場合,気づかずにmsiファイルを暗号化してしまうことがあることにも注意が必要だ。インターネットからダウンロードしたmsiファイルを,デスクトップに保存する場合がそうだ。ユーザー・プロファイル・フォルダには,ユーザーのデスクトップが含まれる。暗号化したつもりはなくても,ダウンロードしたmsiファイルは自動的に暗号化される。インターネットからmsi形式のファイルをダウンロードする場合は,暗号化されていないフォルダに意識して保存するか,インストールを実行する前に暗号化を解除する必要がある。

(櫻井 敬子)