「コンピューターの魔法を使いこなそう」。これは、7月下旬に発行する小学生向けのRubyプログラミング入門書の序文として、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏からいただいた言葉の一部である。このように、プログラミングによりコンピュータを使いこなすことを「魔法」に、その担い手であるプログラマを「魔法使い」になぞらえることはよくある。

 では、昨今のプログラミング教育・学習の盛り上がりは、子どもたちを立派な「魔法使い」に育てようという機運が高まっているということなのだろうか。

 いつごろからプログラミングを魔法になぞらえるようになったのだろうか。著者の手元にある本では、米国で1975年に初版が発行された『人月の神話』(日本での初版のタイトルは『ソフトウェア開発の神話』)において、プログラムを魔法になぞらえる以下の記述がある。

 神話や伝説の魔法は、いまや現実となった。キーボードで呪文を正しく打ち込めば、ディスプレイに生命が吹き込まれ、これまで存在しなかったような、またありえないはずだったものを目の前にみせてくれる。

フレデリック・P・ブルックス,Jr著、滝沢徹ら訳『人月の神話』新装版、ピアソン・エデュケーション、2002年、7頁

 また、プログラマを魔法使いにたとえる記述もある。

 今も昔も自慢好きな魔法使いがいる。

同、130頁

 最近では、コンピュータ科学教育の振興を目指す非営利組織Code.orgによるプログラミング学習推進キャンペーン用のビデオにおいても、「明日のプログラマーは、将来の魔法使い(The programmers of tomorrow are the wizards of the future!)」という主旨の発言が盛り込まれている(ビデオはこちら。当該発言は4分50秒から)。