今年も総務省の情報通信白書が発行される季節が訪れた。本稿執筆時点ではまだ閣議決定されていないが、恐らく概況は昨年と大差ないだろう。インターネット普及率は9割、スマートフォン利用率も5割を超え、ビジネスや政策も、関心の対象は「使う」から「使いこなす」、つまり応用領域に移っているはずだ。

 日経コミュニケーションの読者であれば、インターネットを使っていない人はゼロだろう。あるいは読者各位が普段業務で接する人の利用状況も同様か、スマートフォンを使っていない人を探すほうが難しいかもしれない。

 しかし筆者はこうした概況を長年見続けてきて、やはり違和感を拭えずにいる。果たして日本社会において、白書が喧伝(けんでん)するように、インターネットやスマートフォンがそこまで定着・浸透しているのだろうか。

「ネットを使わない人」はまだ多い

 例えば幼稚園や小学校に通うお子さんがいるなら、次のようなことを経験されてはいないだろうか。父母向けにインターネットメールから一斉に同報メールを送ったが、フィーチャーフォンしか使わない父母のキャリアメールのフィルター機能ではねられてしまったというものだ。

 また、地域で催されるお稽古事やイベントのために、住所録や配布物をデータ化しても、次の人に引き継げないこともままある。

 そんなことはITリテラシーの低い一部の人の話ではないか─。SNSなどでは、こうした反応が必ず返ってくる。しかし現在、幼稚園や小学校に通う子供の親御さんとなると、第2次ベビーブーマー世代であり、絶対的な人口数は多い。東京23区という人口密度やITリテラシーが相対的に高い地域においても、同じクラスで3割くらいの親御さんが、このような状況にあると感じられる。

 スマートフォンやSNS普及率の分布が都市型を指向していることを踏まえれば、むしろ都市圏以外の方が、このような傾向は一層顕著かもしれない。