政府はまもなく、新しい国家IT戦略として「世界最先端IT国家創造宣言」の改訂版を閣議決定する。同戦略の一部は、6月中に閣議決定される新しい成長戦略「日本再興戦略 改訂版」にも取り込まれることになっており、IT戦略としてだけでなく、成長戦略の一環としても推進されることになる。

 新しい世界最先端IT国家創造宣言は、全体の章構成や基本理念、目指すべき社会・姿については2013年版を踏襲している。改訂したのは、具体的な取り組みの部分である。材料としたのは、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)の新戦略推進専門調査会が設けた9つの分科会(電子行政、新産業、農業、医療・健康、防災・減災、道路交通、人材育成、規制制度改革、マイナンバー等)での議論である。

戸籍・旅券・車検などにも適用、カードは保険証と一体化

 社会保障と税の番号制度、いわゆるマイナンバー制度については、これまでの制度導入に向けた取り組みに加えて、新たに制度の利活用の推進が盛り込まれた。たとえば、マイナンバーの利用範囲の拡大や制度基盤の活用では、特に(1)戸籍事務、(2)旅券事務、(3)預貯金口座への付番、(4)医療・介護・健康情報の管理・連携、(5)自動車検査登録事務――の5分野を取り上げ、検討状況を2014年秋までに政府CIOに報告することとした。

 これら5分野の多くは、マイナンバー制度の設計開始当初から導入効果が期待されていたものの、「社会保障・税・防災」の分野を優先する政府方針や、所管官庁が多岐にわたる煩雑さなどから、適用が見送られていた。

 たとえば預貯金口座へのマイナンバー付番は、税の捕捉率の向上につながるが、1980年代のグリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)制度の導入失敗もあり政府は取り扱いに慎重だった。政府税制調査会のマイナンバー・税務執行ディスカッショングループが4月にまとめた「論点整理」で、社会保障での所得・資産要件の適正な執行や適正・公平な税務執行の観点から、預金口座へのマイナンバー付番を「早急に検討すべき」と明記したことが後ろ盾になったと言えそうだ。マイナンバー等分科会が5月に公表した「中間とりまとめ」では、預金保険法や犯罪収益移転防止法などに基づいて金融機関が実施する顧客の名寄せや口座名義人の特定などを適用事務の例に挙げている。