一つだけ数字を挙げても、必ずしもその数字が持つ価値を正しく伝えられるとは限りません。具体的にイメージできるように、営業成績を報告するケースを考えてみましょう。

 明るくて元気なAさんは、鼻息を荒くしながら「今月は100万円を売り上げました!」と報告しました。一方、見るからに大人しそうなBさんは、「今月は100万円を売り上げました。これは前月比10%アップです」と淡々と報告します。さて、あなたはどちらの報告に納得感や説得力を感じますか?

 Aさんの話し方や口ぶりから、「おっ!今月は100万円“も”売り上げたのか」といった印象が伝わってきます。しかし、「100万円」が実際には良い結果なのか悪い結果なのか、客観的に判断することはできません。その点、Bさんの報告は客観的に判断できます。「売り上げ100万円」が持つ価値は、相対的な目安となる数字「10%増」が組み合わさってはじめて明確になったのです。

 こうしてみると「数字が持つ価値を正しく伝える」という行為が、簡単なようで実は意外に難しいことが分かります。冒頭の例では二つの数字を組み合わせることで「100万円」という数字が持つ価値を、正しく伝えることができました。では、三つ、四つとさらに多くの数字を組み合わせれば、数字の持つ価値をより正しく伝えられるのでしょうか。必ずしもそうとは言えません。むしろ情報が多くなりすぎることで、自分が伝えたい数字がかすんでしまいかねません。

 例えば、最も効果的なインターネット広告の配信を検討している担当者から、現状の広告効果を分析して提案を依頼されたケースを考えてみましょう。

 あなたは、どのインターネット広告から自社のWebサイトにアクセスしてきたのかを把握するため、IT部門と協力して一定期間のアクセスログを保存・収集し、それらを広告媒体ごとに集計してシェアを分析してみました。結果は「媒体A」が51%、「媒体B」が39%、「媒体C」が3%、「媒体D」と「媒体E」が各2%、「媒体F」「媒体G」「媒体H」が各1%でした。