「2017年に、世界のICTシステム市場の8割がクラウドになる」。NECの福田公彦執行役員は14年5月20日のクラウド専用プラットフォームの発表会で、こんな大胆な予測を披露した。ガートナーやIDCなど著明なIT調査会社を上回るクラウドの普及率を予測した真意は、どこにあるのだろう。

 NECの推定によると、世界のICTシステムの中で、クラウドベースのシステムは2013年の3110億ドルから、17年に9350億ドルと3倍に拡大する。対して、オンプレミスは13年の5940億ドルから、17年に半分以下の2460億ドルまで大きく減少するという。

 福田公彦執行役員は「マーケットは急激に変化する。とくに新興国は最初からクラウドを利用する」と、構築したシステムをユーザーが所有する市場は縮小すると読む。つまり、サーバーの販売が落ち込むことを意味する。その打開策として、NECはクラウド専用プラットフォームの投入を決断したのだろう。

 開発したのは、ホスティングサービスやIaaS、さらにはビックデータ分析に適する省電力型サーバーを中核とした統合システム。サーバーにはモバイル機器向けプロセッサのインテル製Atomを採用し、1ラック当たり最大700サーバー(5600コア)を収納できる。こうした省電力、高集積のサーバーは米HPが13年4月に正式発表したAtomを搭載したムーンショットが先行する。

 NECはHPとの差異化を図るために、ソリューションを組み合わせた提供を考えている。その推進役として、米国にソリューション企画部門を新設し、米スタンフォード大学が取り組むビックデータ関連の研究開発に参画するなどし、クラウドの先進的な活用事例を揃えていく。

 遠藤社長は先の13年度決算説明会で、「どんなビジネスモデルにすればいいのか」と語り、ビックデータ事業の収益モデルを見つけ出す難しさを吐露していた。米国に一つの解を求めたのだろう。