ヤフーとイー・アクセスが経営統合を中止することが5月19日に突然発表された。両社は今後、業務提携を目指すという。

 統合発表によって株価が大きく動いた後でもあり、資本市場関係者からは「いくら爆速をうたうネット企業とはいえ、投資家を軽視しすぎでは」という声が聞かれた。また統合後のブランディングなどの提案を進めていた広告代理店関係者は「唖然とした」と話す。そして規制当局は、ただただ苦笑するばかりだった。いずれも、発表後の数時間で私が見聞きした反応だ。

 特に規制当局の苦笑には理由があるだろう。従来の電波免許は同一グループ内の企業であっても共用できず、MVNO(仮想移動体通信事業者)として貸し借りをする関係だった。しかし、3.5GHz帯の新規割り当てが迫る中、同一グループ内での電波の融通を可能にすべく、総務省が検討に着手すると日本経済新聞が5月16日に報道した。同一グループ内の異なる事業者にまたがる「キャリアアグリゲーション」の実現を意識したものだ。

 ソフトバンクは経営統合後のワイモバイルを、資本政策上の工夫によって、なんとか見かけ上はソフトバンクと異なる事業体にしようと試みていた。電波の割り当てを優遇してもらおうという狙いからだ。しかし総務省の規制方針の変更でこれが無意味化する。経営統合の大きな理由がなくなれば、それが解消されるのは当然といえば当然だろう。

経営戦略が陳腐化している印象

 それにしても改めて考えてみると、今回の統合はやや無理筋だった。