「JINS」ブランドのメガネを展開するジェイアイエヌが、2014年5月、「JINS MEME」(ミーム)という新商品を発表した。JINS MEMEは、メガネのフレームに搭載したセンサーで目の動きやまばたきを検知し、メガネをかけている人の眠気や疲れなどを計測できる新しいウエアラブル端末だ(写真1)。発売は2015年春を予定している。
かけているだけで、自分で気づかない体調の変化を可視化したり、居眠り運転を予防したりといったさまざまな可能性が期待されている(関連記事1:メガネのJINSが新ウエアラブル、眼電位センシングで“自分”を可視化、関連記事2:【News & Trend】JINSが“自分の内面を見る”メガネ、眼電位から眠気や疲れを可視化)。
視線や目を動かすことで、スマートフォンの操作もできる。発表会で実際に体験してみた筆者は、「これは面白い!」とワクワクした。さらにジェイアイエヌは、ソフトウエア開発キット(SDK)を提供する予定。今後、アプリ開発者がJINS MEME用アプリを作れば、用途やサービスがもっと広がりそうだ。
JINS MEMEの発表会からの帰り道に、筆者はこの製品を開発したのはなぜメーカーでもなく、IT企業でもないジェイアイエヌ自身だったのだろうと改めて考えていた。
ジェイアイエヌはパソコン用メガネ「JINS PC」を累計で350万本、軽量メガネの「Air frame」を累計1000万本売るなど、新しいメガネを市場に出してヒットに育てた経験を持ち、メガネ業界のイノベーターともいえる存在だ。それでも今回のJINS MEMEは、アプリ開発やスマートフォン連携など、メガネ会社にとってはまったく新しい分野へのチャレンジとなる。
IT業界の企業が主導してメガネメーカーの協力を得て開発するならわかるが、メガネメーカーが主導するというのは勇気がいるように思う。例えば、読者のみなさんが所属する企業だったら、これだけ異なる分野への参入を決断するだろうか。
実は筆者は、ジェイアイエヌ社長の田中仁氏の著書『振り切る勇気』の編集を担当しており、1年以上前から田中社長と打ち合わせや原稿のやり取りを続けて来た。そこでの経験に照らし合わせて考えてみると、こうしたチャレンジの背景には、田中仁社長のリーダー力とジェイアイエヌのビジョンの力が大きいように思う。