写真1●AgICの清水信哉CEO。手に持っているのはAgICで作成したブックカバー。LEDが光っている
写真1●AgICの清水信哉CEO
手に持っているのはAgIC Printで作成したブックカバー。LEDが光っている
[画像のクリックで拡大表示]

 「創業して半年もたたないベンチャーですが、ほぼ8万ドルの資金を集めました」と語るのは、2014年1月に設立した「AgIC(エージック: http://agic.cc/)」というベンチャー企業のCEO、清水信哉氏(写真1)。

 同社は米国のクラウドファンド「Kickstarter (http://www.kick starter.com/)」で「AgIC Print」というプロダクトを登録し、2014年3月から出資を募った。そして、ほぼ1カ月で7万9939ドルを調達した(写真2)。当初は、調達資金目標を3万ドルに設定していたが、あっという間に到達。最終的に、当初予定の266%にあたる出資額を獲得した。

写真2●KickstarterのAgICのページ
写真2●KickstarterのAgICのページ
[画像のクリックで拡大表示]

 AgICが開発したのは「AgIC Print」というソリューション。東京大学大学院情報理工学系研究科の川原圭博准教授が研究した、家庭用のインクジェットプリンタを使って電子回路を印刷する技術を応用したものだ。銀微粒子を含んだ特殊なインクを使って、紙やシート状のプラスチックに電子回路やセンサーを作成できる。CEOの清水氏は東京大学出身で、川原氏の授業も受けたとこがあり、その関係から会社設立に発展したという。

 AgICはこのインクで絵が描けるペン(写真3)を開発して、ペンと電池、LEDなどを組み合わせたキット、このインクを使って作成した名刺、そして回路を印刷できるインクジェットプリンターなどを開発した。Kickstarterでは、これらの製品の開発について出資を募った。それぞれの製品について金額が提示され、資金を提供する側は、欲しいものがあったら、申し込んで金額を支払う。ファンドが成立したら、これらの製品を入手できるといった仕組みだ。金額はペンのキットは29ドル、名刺が29ドル、プリンターは599ドルといったところだ。出資というよりは、事前予約で製品を購入する感覚に近い。

 ちなみに、名刺には回路が印刷されている。指定の場所にLEDを貼り込んで、指定通り切込みを入れて折って、USBポートに挿し込むと、LEDが点灯する仕組みになっている(写真4)。

写真3●AgICの開発したペンで回路を描いたところ。単純な回路を描いて、右下のようにLEDを点灯させた。
写真3●AgICの開発したペンで回路を描いたところ
単純な回路を描いて、右下のようにLEDを点灯させた。
[画像のクリックで拡大表示]
写真4●AgIC Printで作成した光る名刺。名刺をUSBポートに挿し込んでLEDが点灯したところ。
写真4●AgIC Printで作成した光る名刺
名刺をUSBポートに挿し込んでLEDが点灯したところ。
[画像のクリックで拡大表示]