連休の狭間の4月30日、総務省は年度末で節目を迎えた各種研究会の報告書を公表した。そのほとんどは自治体の財務・会計分野の報告書だが、そこには今後の自治体システムのあり方に少なからぬ影響を与えそうな事項も含まれていた。

 一つは、決済手続きの電子化だ。自治体の公金収納は一部でクレジットカード払いにも対応しつつあるものの、大半は依然として現金あるいは口座振込のまま。電子マネーなどの新しい決済手段には対応できていない。

 また、都市部の地下鉄やバスの運賃、高速道路の通行料金の支払いでは、非接触型ICカードの利用が主流になっている。だが、出張や外出などの際に、こうした場面で自治体職員がクレジットカードや電子マネーにより公金を支出することについては、明確な規定がない。電子化による決済手段の多様化に、制度面の対応が追い付いていないのが実情である。

 自治体システムに影響を及ぼしそうな財務会計分野のもうひとつの動きは、自治体の公会計制度の見直しである。現金収支を議会が統制することで予算の適正・確実な執行を確保する「現金主義会計」は維持するものの、資産(ストック)やコストをより把握しやすくするために民間では一般的な「発生主義・複式簿記」の導入も促進し、現金主義会計を補完する方針が打ち出された。

 複数ある会計基準を一本化して財務状況を横並びで比べやすくしたり、新たに固定資産台帳を整備し公共施設のライフサイクル管理などに役立てたりすることも目指す。

 自治体システムに影響を及ぼしそうな財務会計分野の最新の動きについて、狙いや要点を見ていく。

現金前提からカードや電子マネーも使える制度へ

 自治体での決済電子化の推進については、2つの報告書が取り上げた。「地方自治体における行政運営の変容と今後の地方自治制度改革に関する研究会」(座長:宇賀克也 東京大学大学院法学政治学研究科教授)の報告書と、「地方公共団体の財務制度に関する研究会」(座長:碓井光明 明治大学法科大学院教授)による中間的な論点整理である。事務局は、それぞれ総務省自治行政局内の室・課が担当した。

 前者の地方自治制度改革研究会の目的は、人口減少とともに社会経済や地域社会が変容していく中で今後の自治体制度改革の指針を見いだすこと。過去20年間の制度改革を振り返って課題を整理し、今後の制度改革の方向性を示した。