仕事をしていく上でどのような力を身に付けるべきか。即答が難しい質問だが、4月はその答えを考える良い時期と言えよう。多くの企業が新年度に入り、新入社員を迎える。「今年度こそ、この力を付けよう」と決心する人もいれば、新人から心構えを質問されて考え込んだ人もいるだろう。

 基本となるのは何と言っても技術力である。情報システムの企画、設計、開発、運用、どの仕事であっても技術力が欠かせない。技術力とは何かと考え出すとこれはこれで難しい話になるため、情報システムの企画、設計、開発、運用の「やり方」を身に付けるとしておく。情報システム関連の商売をしている企業であれば社員に対して何らかのシステム設計法とプログラミングを教え、さらにデータベース管理システムやネットワーク機器などの設定や動かし方を指導している。

 もう一つ求められるのは、人と組んで仕事をする力である。同僚や先輩後輩、顧客の担当者や管理者、仕事を委託する協力先の担当者や管理者、たくさんの人と一緒に仕事をしなければならない。チームをどうまとめていくか、面倒な交渉をどうこなすか、人に関わる問題はたくさんある。情報システムの仕事場で技術者はパソコンの前に座っていることが多いが、人と無縁ではない。逆である。パソコンの中には企業の仕事に必要な情報が流れており、それらのすべてに人が関わっている。

 技術にも人にも強くなるのは簡単ではない。しかも、その二つに強ければ十分とも言えない。題名に掲げた通り「身に付けるべき第三の力」がある。

経営者が求めていること

 第三の力について、情報システムの仕事をする側からではなく、情報システムを利用する企業や団体の責任者の立場から考えてみたい。

 経営者や責任者の談話を聞いたり読んだりしていると、所属員の力をまとめて本来あるはずの総合力を発揮するといった主旨の発言が目に付く。例えば「当社には様々な技術があり、これらを組み合わせて新事業を創出したい」「グループ内の各企業が協力してシナジー効果を出したい」といったものだ。買収や提携の結果、社外の相手とも組むことも当然ある。