「ガレージで一風変わったものを開発している」――。

 そんなネット企業があると聞き、先日、その「秘密基地」にお邪魔してきた。

 何でも通常の開発オフィスとは別に、「ガレージ」風の特別な開発拠点を設け、そこで大量データを瞬時にさばく“激速インフラ”を実現するための先端開発をしているのだという。

 「ガレージで先端開発」なんて、まるでシリコンバレーの会社みたいである。興味をそそられた筆者は早速、取材を申し入れ、3月某日、そのガレージに潜入してきた。今回はその様子をリポートする。

 さて、お邪魔したのは、マイクロアドという企業である。

 アドテクノロジーにお詳しい読者の方であれば、「RTB(リアルタイム・ビッディング)」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。RTBというのはその言葉通り、ネット上に表示するデジタル広告を、コンピュータ同士で超高速に自動入札するものだ。マイクロアドは、このRTB向けのプラットフォームを手掛けている企業で、RTBの領域では外資系を除けば国内企業として最大規模の会社だ(関連記事:[高速化を突き詰める]リアルタイム・ビッディング、高頻度取引)。

 RTBでは、サイトを訪れたユーザーにデジタル広告を表示する権利を、広告主同士がオークション形式で競り合う。最も高値で落札した広告主が、無事、そのユーザーに自社のサービスや製品についての広告を表示することができる。

 オークション自体は、ユーザーがサイトを訪れた瞬間に自動的に開始され、わずか数ミリ秒後には落札者が決まる。サイトを訪れたユーザーからすると、自分がサイトを訪れた瞬間に裏で超高速のオークションが行われているなどということには気付かず、サイトが表示されるのとほぼ同時に広告が表示されているように見える。こうしたデジタル広告を表示するのに何秒もかかってしまっては意味がないため、まさにITインフラのスピードが勝負となる世界である。