1990年、当時公開された「TRON電脳住宅」の話を聞いたとき、ちょっと興奮したことを覚えている。自宅に帰ってくると、自動的に明かりがつき、室温もちょうどよく、うまくするとお風呂もわいている。住む人間にとって快適な空間を、センサーと制御機器で実現する、というものだ。当時の感覚としては、できたとしてもハウスメーカーのつくる超高級住宅で、自分には縁遠いものであった。まあ、まだインターネットはごく一部でしか使われていなかったし、筆者はせいぜい、ニフティサーブでパソコン通信、といった時代である。

写真1●「Netatmo ウェザーステーション」のiPhone用アプリの画面
写真1●「Netatmo ウェザーステーション」のiPhone用アプリの画面
インターネット経由で遠隔地にあるセンサーで計測した気温と湿度などを表示する。上が筆者の家のベランダで、下が室内の結果。
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 その24年後、今、住んでいる賃貸マンションは、玄関を開けると、人感センサーが働いて自動的に灯りが点灯する。新しめのマンションなら、ごく普通の仕様のようだ。世の中、多少は進んできて、人感センサーと照明器具といった組み合わせだけなら、連携できるようになった。ただし、我が家では人感センサーの情報をほかの機器で共有することはできていない。

 それでも、いろいろな取り組みが進んでいる。例えば、Wi-Fiにつながってインターネット経由で制御できる家電製品とか、室内にある温度センサーの情報を、遠隔地のスマートフォンに表示する製品(写真1)などが、昨年から購入できるようになってきた。筆者はこういった製品を触ってみるのが好きで、かつ寛大な奥様の理解もあって、こつこつと購入してきた。とりあえず、自宅の室温や湿度をどこにいても確認でき、家の中にいるとき雨が降ってくると、明かりの色が変わって教えてくれる、といったことはできるようになった。

 本記事では賃貸住宅でもできる、ちょっとした“電脳住宅化”についての体験を記録しておきたいと思う。