都内の道路を走る無数のタクシー。その実に6割が「空車」だと聞いたら、あなたは驚くだろうか。

 こうした状況にもかかわらず、いざタクシーに乗りたいと思った時に限って、「流しのタクシーが1台も通りかからない」「やっと来たかと思ったら実車中」という経験を、誰しも一度や二度はしていることだろう。“空っぽ”のタクシーと乗りたい顧客のアンマッチが、長い間繰り返されてきた。

 「今すぐタクシーに乗りたい!」というニーズは確実に存在するのに、タクシー会社はその期待に応え切れていない。みすみす乗車機会を逃し、総台数の半数以上という高い空車率を生み出してしまっていた。景気はようやく上向きになってきたとはいえ、タクシーの利用者数は年々減少が続いている。このままではタクシーは産業として、ジリ貧になる。

 そんな時、「何とかしなければ」と立ち上がった男たちがいた。今日はそんな話をしたい。

写真1●タクシーの共通配車サービス「スマホ de タッくん」
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 東京ハイヤー・タクシー協会が2014年1月21日に始めた、スマートフォンのアプリを使ったタクシーの共通配車サービス「スマホ de タッくん」が生まれるまでの、“熱い”ドラマである(関連記事:「東京の全タクシーの半数を呼べる」新スマホアプリが登場)。

 スマホ de タッくんは、ライバル同士である東京のタクシー会社が会社間の壁を乗り越えて、「窓口の一本化」に成功した共通配車アプリ(写真1)。6つのタクシー無線グループが参加する、日本初の画期的なサービスである。サービス開始当日に開かれた記者会見に来賓として出席した、国土交通省大臣官房の若林陽介審議官も、最大限の賛辞を送った。