「営業利益ゼロ、経常利益ゼロ、当期利益ゼロ、配当ゼロ」。グループウエアのサイボウズは2014年2月17日の決算事業説明会で、こんなに“ゼロ”の並ぶ2014年度の業績予想を公表した。

 パッケージソフト会社からクラウドサービス事業者へのビジネスモデルを変革する青野慶久社長の決意で、開発費やマーケティング費用など増やし、サービス利用者1000万人にする計画である。

 青野社長は「今年がどうの、来年がどうの、ということではない。10年後、20年後を見据えてのこと。約30億円の現金などがある財務状況のよいこともあり、アクセルを踏む」と、“利益ゼロ”を宣言した理由を説明する。

 もちろん、「グループウエアでは、米グーグルなどに負けない」(同)とし、世界に通用するソフト会社にする、との強い思いがある。そのため、グループウエアに最適なクラウド基盤から開発環境、クラウドサービス(SaaS)を自前で揃えるために、累計30億円を大きく超える開発投資をした。

 広告宣伝費は、13年度の9億円弱から、今期はそれを上回る額を計画する。クラウドを活用した業務改革のパートナーとしての認知度を高める作戦も練るなど、「積極的にクラウド関連サービスの開発や広告宣伝に投資した」(青野社長)結果、経常利益率は12年度の12%から13年度に5.1%にダウン。さらに、14年度はゼロになる、としたのだ。

 その一方、売り上げや顧客は確実に増やしてきた。11年11月に提供を開始したクラウド基盤cybozu.comの有料契約社数は6000社を超え、毎月200から300社のペースで増え続けている。開発環境kintoneやSaaSなどを含めたクラウド関連の売り上げも、12年度の2億5900万円(決算月変更で11カ月分)から、13年度は8億9700万円と大きく伸びた。

 今期は15億円を見込み、新しいパートナーとの協業を推進する。新パートナー候補は、アマゾンウェブサービス(AWS)やグーグル、セールスフォース・ドットコムなど、主要なクラウド基盤やサービスを活用するIT企業。その1社が、06年に創業したクラウドインテグレーションを展開するウフルだ。こうしたクラウド基盤やサービスをベースにしたシステム開発・販売の実績を持つウフルのようなIT企業に、cybozu.comやkintoneも扱ってもらえるような支援策がいる。