コンピュータの「ユーザーインターフェース(UI)」には、二つの用途があることにお気づきだろうか。一つはご存じの通り、我々人間がコンピュータを利用するための接点(インターフェース)である。もう一つは、コンピュータが人間を観察するための接点だ。

 UIを通じて人間行動を「機械学習」したコンピュータが、人間のように行動できるプログラムを次々と生み出していく――。SFのような未来が、もうそこにまで迫っている。

 「今後の機械学習の発展にとって最も重要なのは、UIの進化だ」。記者にそう教えてくれたのは、米IBMの「トーマス・J・ワトソン研究所(ワトソン研)」で人工知能「Watson」の研究開発を進めているBrian Gaucher氏(写真1)である。記者は2013年11月、機械学習の最新動向を取材するために、IBMのワトソン研を訪問していた。

写真1●米IBMトーマス・J・ワトソン研究所のBrian Gaucher氏
写真1●米IBMトーマス・J・ワトソン研究所のBrian Gaucher氏
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行動履歴を機械学習して、アルゴリズムを自動生成

 機械学習とは、人間が言葉や常識を学習する過程を機械(コンピュータ)に再現させることによって、コンピュータがデータの中から知識やルールを自動的に獲得できるようにすることである。現在、機械学習の応用として最も期待されているのは、コンピュータに人間の行動履歴を機械学習させることによって、人間のような知性を実現する「アルゴリズム」を人間の行動パターンから自動生成することである。