「エンタープライズ系?SIerの方とかですよね。全く接点はないです」。生活のHowTo投稿サイト「nanapi」を運営するnanapiの和田修一Co-Founder 取締役 執行役員 CTOはごく普通のことのようにこう語る。

 和田CTOは32歳。新卒で楽天に入社してインフラを担当。2009年に退職してnanapiのCTO(最高技術責任者)に就任した。今でこそマネジメントの仕事が増えてきたため機会が減ったが、最近までは、企業の枠を超えた勉強会に参加して、人脈を広げていた。それでも、話をするのはほとんどネット系の技術者。エンタープライズ系の技術者と交わる機会はなかったという。

 一般に、エンタープライズ系とネット系の技術者は交流する機会が少ない。ITproの読者で技術職の方は、エンタープライズ系が多いだろう。ネット系技術者との交流は少ないのではないか。

 ここでいうエンタープライズ系技術者とは、会計システムや営業支援システムといった企業情報システムの構築や運用を担当する人を指す。ユーザー企業のシステム部門か、そこから依頼を受けて受託開発をするSIer、もしくは業務パッケージやSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の開発元に所属する。

 エンタープライズ系とネット系とは、単に関わり合いがないだけではなく、採用する技術、開発プロセス、システム構築に対する考え方がまるで違う。同じようにシステム構築を担当する技術者とは思えないほど断絶しており、まるで異世界のようである。

 さて、勘のいい読者はこのあたりでお気付きかと思うので先にネタをばらししてしまうと、本コラムの結論は「異世界と思われていたエンタープライズ系とネット系の間に共通点が見えてきた」というものだ。

 この結論に至る過程として、まずはエンタープライズ系とネット系の現状がどれだけ異なるかを整理したい。以下に、エンタープライズ系とネット系の典型を示す。

ネット系は「現状を維持することがリスク」

 まずはネット系から整理する。「構築するシステム」「新技術」「保守開発」「開発・運用プロセス」「体制」「何をリスクと考えるか」の観点でまとめる。