ご存じの方も多いかもしれないが、先月、米国のとあるベンチャー企業が事業を畳んだ。

 ARMアーキテクチャを用いて、データセンター向けにサーバープロセッサを開発していた米Calxeda(「カルゼーダ」と発音する)である。

 同社のARMプロセッサは、米Hewlett-Packard(HP)のデータセンター向けマイクロサーバー「Moonshot」の試作機に採用されるなど、一定の評価を得ていたかに思われた(写真1写真2)(関連記事:HP、低消費電力サーバー開発プロジェクトを発表、ARMプロセッサを採用)。これまで、英ARMやベンチャーキャピタル(VC)などから総額約100億円もの資金を調達しており、まさにこれから事業を拡大しようという時期だった。

写真1●HPが2011年11月に発表した「Moonshot」の試作機の外観。Calxedaの32ビットARMプロセッサを搭載していた
写真1●HPが2011年11月に発表した「Moonshot」の試作機の外観。Calxedaの32ビットARMプロセッサを搭載していた
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写真2●Moonshot試作機に採用されていたCalxedaのブレード。クアッドコアのチップを4個搭載している
写真2●Moonshot試作機に採用されていたCalxedaのブレード。クアッドコアのチップを4個搭載している
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 しかし、結果としてシリーズDの資金調達にVCなど投資家からの支持が得られず、事業を畳むことを決断した。既にほとんどの従業員は解雇され、今後は開発した知的財産の活用(ライセンスなど)に事業を絞り込むようだ。

 ARMアーキテクチャは、スマホなどモバイル分野で支配的なシェアを持つ。iPhoneやiPad、ほぼすべてのAndroidスマホ・タブレットが、ARMプロセッサを搭載する。組み込み機器も、海外ではARM搭載品が多い。

モバイルからデータセンターへ

 バッテリ駆動で電力効率が重視されるモバイル分野で磨かれたARMアーキテクチャを、同じく電力効率や設置密度が課題になっているデータセンター分野に適用しようというのが、CalxedaをはじめとするARM陣営の狙いだった(関連記事:「アームがプロセッサを64ビット化」)。ARMアーキテクチャの元締めであるARMが出資し、大手サーバーベンダーのHPが採用するなど、Calxedaはこの分野の先駆者的な存在だった。