多重下請けは、必要悪ですよ――

 日経コンピュータ2014年2月6日号の特集「悪弊を断つ」の取材を通じ、技術者や経営者の方々から何度も聞いた言葉だ。

 大手SIer(システムインテグレーター)が請け負った仕事を、2次請け、3次請け、4次請けと下ろしていくピラミッド構造。先月に木村編集委員が当コーナーで触れたように(関連記事:「SIガラパゴス」を育んだIT部門の罪)、多重下請け制はIT技術者を幸せにしない国内IT業界の悪弊として、長らく非難の的になってきた。

 とはいえ、解雇規制が厳しい日本において「多重下請けは必要悪」という指摘が、一面の真理を突いている事も、記者として認めざるを得ない。

 大規模なシステム開発プロジェクトを立ち上げる際、必要なスキルセットを備えるIT技術者を素早く、大量に調達する仕組みとして、全国に張り巡らされた多重下請けネットワークは恐ろしく効率が良い。今回、取材した大規模プロジェクト経験者は、「下請けネットワークを辿り、9次請けまで辿って、ようやく求める業務知識やスキルを備えた人材に巡り会うこともある。このネットワークなしには、適切な人材にアクセスするのは難しい」と語る。

 国内IT業界に、多重下請け制が根強く残っている背景には、この仕組みが日本のSIerのビジネスモデルとガッチリ結びついている点がある。