本欄に書く際、長い題名を付けることが多かったので、今回は「女性は鬼門」と五文字にしようと思ったが、誤解を招きかねないので止めた。「鬼門」を辞書で引くと「その人にとって、どうにもうまくいかない相手・場所・事柄」とある。「どうにもうまくいかない事柄」は「女性について書くこと」だ。

 記者になって一年目か二年目だから、もう30年近く前、「谷島くん、この提案は議論しないから。分かるね」と日経コンピュータ誌の編集長から言い渡された。記事の企画を編集会議に提出したところ、没になったわけだ。

 通常なら提案を出すと説明を求められ、副編集長や同僚の記者から意見や質問が出て、最後に編集長が「進めてよい」「再提案を」「却下」などと言う。説明も議論も無しで却下されたのは後にも先にも、その時だけだった。

 企画は、コンピュータ業界の女性活用に関するものであった。どのような提案であったか、内容を覚えているが、差し障りがあり、書くわけにはいかない。

 ITproの「記者の眼」欄にコラムを書くようになったのは2001年3月13日に公開した『増える「動かないコンピュータ」』からだが、過去13年の間、書いた原稿をお蔵入りにしたことがあった。「私が会ったコンピュータ業界の女性たち」といった内容で、長年の取材を通じて印象に残った女性経営者やエンジニアについて書いたものだ。