日本の物流が、激変期を迎えている。ヤマトホールディングスは2013年10月、1400億円を投じて国内最大級の物流拠点を稼働させた。独自の倉庫管理システムなどを磨き上げ、これまで比較的手薄だった企業向けビジネスを開拓する。一方、ヤフーや楽天といったネット企業は物流に儲けのチャンスが潜んでいるとにらみ、積極投資に打って出た。

 宅配便の王者が次の成長をITに託し、IT業界の雄も物流を利益の源泉に位置づける――。

 日経コンピュータ11月14日号では「物流ITウォーズ」と題し、物流とITの接点で起きている変化を特集記事として掲載した。ヤマトや楽天に加え、住友商事やコメリ、大和ハウス工業など日本を代表する企業が、ITを活用して物流を強化する戦略も紹介している。

 詳しくは誌面をご覧いただきたいが、ここでは特に印象的だった企業を紹介したい。北海道におけるコンビニエンスストア最大手、セイコーマートである。セブン-イレブンやローソンなど全国チェーンの出店攻勢をはねのけ、道内の店舗数首位を長年にわたって保ち続ける北の王者だ。

写真●セイコーマート会長の赤尾昭彦氏
写真●セイコーマート会長の赤尾昭彦氏
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 北海道の面積は九州と四国の合計より広い。しかも、他地域を上回るスピードで、人口減少が進んでいる。流通企業として経済合理性を最優先するなら、都市部に集中出店するのが正解だろう。過疎地まで店舗網を張り巡らせることによる、物流コストの増大が無視できないからだ。

 だがセイコーマートは、そんな外野の声など気にしない。全道179市町村のうち、169市町村に出店。道内店舗数は既に1000店を超え、人口カバー率は99.4%に達した。他県を含めた全店売上高は1800億円を突破し、さらに右肩上がりを続けている。

配送トラック効率化し、年1億円のコスト削減

 これを支えているのが、物流とITの内製化戦略だ。

 セイコーマートはコンビニ店舗だけでなく、原料を生産する農業生産法人や容器の製造工場、卸や物流機能も自前で抱える。「原料生産から店舗に至るサプライチェーンが長くなると、余計なコストがかかり商品価格が高くなる。チェーン全体を短くするには、システムが必要だ」と同社会長の赤尾昭彦氏(写真)は説明する。そして現在、ITを活用してサプライチェーン全体を貫く物流の強化を進めている。