火を吹く大型プロジェクトがICT業界で目立ち始めている。最大手のNTTデータでは、2013年度上半期の事業計画に大きな影響を与えた不採算案件が6件も発生し、約250億円も営業利益を押し下げた。このほかにも、有力ICT企業の多くが、年間に数億円から数十億円程度と売上高の1%前後に相当する不採算案件を抱えているとみられている。

 なぜ不採算案件になるのか。根本的な理由は、ユーザー企業とICT企業の曖昧な契約にあることが多い。仕様がどんどん変更されたり追加されたりして、システム規模が膨れ上がっていくことを見過ごすからだ。

 だがこうした理由は、10年以上も前から指摘されていたことである。そのためにもICT企業はリスク管理を徹底化し、不採算プロジェクトの撲滅運動に取り組み始めたのではなかったか。設計から製造、テストの各工程の標準化と自動化や見積もり金額の精度を高めた。加えて、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)を設置したり、第3者レビューを取り入れたりするなどして、一定の成果を上げてきたはずだ。

 それでも不採算案件が減らないのはなぜだろうか。ある金融機関の担当者は「(不採算案件の)撲滅運動にこそ実は大きな要因が隠されているのでは」と推測する。

 「失敗を絶対に許さない」という強い姿勢を表す撲滅運動の存在は、非常に重要だろう。だが、失敗の経験がなくなるとむしろ問題発生時の対処法が分からなくなるのでは、と指摘する声がある。問題を先送りしようという考えが出てくる可能性もある。PMOによる細かいチェックに現場が嫌気を感じ、チャレンジする気持ちが薄れていくかもしれない。