さくらインターネットが2011年11月に北海道石狩市に開業した「石狩データセンター(DC)」が、早くも単月ベースの損益で黒字に転換し、開業から3~4年内には累積損益ベースでも黒字化できる見込みだという。これはデータセンター業界において、なかなか画期的な出来事だ。どう画期的なのか、他のDCと比較しながら説明してみようと思う。

 まず、さくらインターネットの石狩DC(写真)がどのような施設なのか、概要を確認しておこう。同社は2011年11月に、ラックを500台格納できるデータセンター棟を2棟建設して、石狩DCを開業した。もっともこの時点で、電源設備や空調設備、ラックなどが据え付けてあるのは1号棟だけ。2号棟は建物ができているだけで、中身は空っぽだった。需要に応じてサーバールームを拡張し、電源設備や空調設備などを順次追加する方針だったからだ。石狩DCには、このようなデータセンター棟を合計8棟分建設するスペースが確保してある。

写真●さくらインターネットの石狩データセンター
写真●さくらインターネットの石狩データセンター
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 同社の田中邦裕社長によれば、2011年11月に営業を始めた1号棟の単月ベースの損益は、1年半後の2013年4月には黒字に転換したという。1号棟の営業利益率は30%近くにも達する見込み。そのため1号棟は、累積損益ベースでも残り2年程度、つまりは開業から3~4年内には黒字化する見通しだ。1号棟のサーバールームが順調に埋まりつつあることから、同社は2号棟へ電源設備や空調設備などを据え付けて、2013年11月から営業を開始する予定である。2号棟に関しても、3~4年での投資回収を見込んでいる。

 さくらインターネット石狩DCにおける黒字化のペースは、データセンター業界では異例とも言えるほど速い。これまでの業界の常識では、データセンターの投資回収には10~20年はかかるとされていたからだ。例えば、野村総合研究所が2012年11月に「東京第一データセンター」を開業した際には、「サーバールームが満床になるまで、8~10年はかかる」という見通しを明らかにしていた(関連記事)。データセンターは、稼働率が4~5割を超えてようやく単月ベースの損益を黒字化できる。累積損益の黒字化も、満床後でなければ難しい。

クラウドへの特化で売り上げを増やす

 なぜ、さくらインターネットの石狩DCは、投資回収期間が短いのか。理由は大きく二つある。一つは、ラック当たりの売上高が大きい「ホスティング」や「VPS(仮想プライベートサーバー)」「クラウド」の提供に力を入れていること。もう一つは、既存の施設と比べてデータセンターの消費電力効率が高く、サーバーの冷却コストなどを低く抑えられていることである。