スマートフォンで小説や漫画を発表して生計を立て、いずれはベストセラー作家に──。

 そんな夢のような話を現実にしてくれる仕組みが、2013年8月に動き出した。1カ月に3万作品以上も投稿があるという、日本最大級の小説やコミックの投稿サイト「E★エブリスタ」の販売プラットフォームである。自分の作品をE★エブリスタに投稿し、自分で値決めをして、自由に販売できる。まさに「誰もがスターになれる場所(エブリスタ=Every Starのもじり)」というわけだ。

 「クリエーターがプロかアマチュアか、有名か無名かはあまり問題ではなく、面白い作品なら必ず売れると思っていました。だから、何とかマネタイズできる仕組みを作りたかったんです」。

 そう言って笑うのは、エブリスタでサービス企画チームのチームリーダーを務める福島瞳美氏(写真1)。彼女こそ、販売プラットフォームを構築したエブリスタのシステム責任者である。20代最後の大仕事が、このシステム開発になった。

写真1●エブリスタの福島瞳美氏。数学とらーめんが大好き
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 最近、IT業界の取材をしていると、女性の担当者に出会う機会が増えたと感じる。特に私が好んで出かけるネット関連の取材では、女性担当者への遭遇率が高い。それだけネットサービスが、我々にとって身近な存在になったということだろう。

 それでも、今回紹介する福島氏のように、その会社のサービスの要となるシステムを、責任者の立場で開発した経験がある女性担当者は、まだそれほど多くないと思う。福島氏は自らサービス内容を企画し、コーディングもこなしながら、開発チームのマネジメントもしている。「仕事に対して納得できる」が信条の福島氏にとって、これこそ納得のいく仕事だった。

 大阪大学大学院理学研究科の出身で、専攻は数学。修士論文では「やわらかい幾何学」とも呼ばれる位相幾何学に取り組んだ。いわゆる“理系女子(通称リケジョ)”である。

 博士課程に進むか迷ったというから、数学好きは半端ではない(ちなみに福島氏は今回の取材中、位相幾何学とは何かを説明するために自分で作ったという簡単な紙芝居画像を使って、私に位相幾何学の概念を説明してくれた。残念だがここでは割愛する)。