先日、日経コンピュータ特集記事の取材で東京都内の某所にある「Tsuru Capital」という、高頻度取引(HFT、High-Frequency Trading)を手掛ける企業のオフィスにお邪魔した。

 HFTというのは、プログラムによって株式などの金融商品を数ms(ミリ秒)から数μs(マイクロ秒)で高速に自動取引すること。自己資金で取引する「プロップファーム(proprietary trading firm)」と呼ばれる企業が中心で、米GETCO(2013年7月に米Knight Capitalと合併)などが有名だ。

 HFTを行うプロップファームの多くは、米国など海外に拠点を置いており、Tsuru Capitalのように日本国内に拠点を置く企業は珍しい。株式売買では、海外企業であっても国内の証券会社と契約し、自社の取引プログラムをその証券会社のサーバーに配置すれば日本市場でのHFTは行える。このため、あえて法人税率の高い日本に拠点を設けるHFTファームは少ない。取引プログラムを置くだけであれば、法人税のPE(恒久的施設)課税の対象とはならないそうだ。

写真●東京にあるTsuru Capitalのオフィスの様子
写真●東京にあるTsuru Capitalのオフィスの様子
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 ところで、このTsuru Capitalという企業、実はITエンジニアの間では知る人ぞ知る企業である。いや、エンジニア一般といったら言い過ぎかもしれない。関数型プログラミング言語の一種である「Haskell」のコミュニティでは、その名を知られた企業なのである。

 一般にHFTファームは、自動取引のシステムを自社で内製することが多い。Tsuru Capitalも同様だ。同社の場合、HFTシステムやログ分析ツール、シミュレータなど、社内のすべてのシステムを、全面的にHaskellで開発している。これまでにHaskellで開発したコードは、約6万5000LOC。社長を除く11人の従業員のほぼすべてがHaskellプログラマーという希有な企業だ。