この連載では、「仕事で成長するための思考術」を扱っている。前回は「動かない、実行しない、立ち尽くす」というネガティブ特性について「実行した人と実行しなかった人の15年後」を紹介した。「成長できない10のネガティブ特性」は次の通りである。

「成長できない10のネガティブ特性」

  1. 考えない、悩まない、思考停止
  2. 動かない、実行しない、立ち尽くす
  3. 柔軟性がない、頑固である
  4. 発信できない、働きかけない、共有できない
  5. 人の話を聞かない、傾聴できない
  6. 自分本位、思い遣りがない、人間音痴
  7. 想像力がない、発想が貧困である
  8. 目標がない、目的がない、夢がない
  9. 計画性がない、段取りが悪い
  10. 状況を把握できない、どの位置にいるのか分からない

 今回も前回の続きとして「動かない、実行しない、立ち尽くす」をテーマとする。

「実行した小栗氏」と「実行しなかった草刈氏」の違い

 損害保険会社A社の保険システム部で開発と保守を担当していた草刈氏(仮名・男性29歳)と小栗氏(同・男性28歳)は双方ともシステム開発分野で高い知識・技能を持ち、十分な経験を蓄積している社員だった。

 しかし、二人の上司である脇坂課長(仮名・男性40歳)は「二人の管理職、組織のリーダーとしての将来性はどうなのか。業務改善、問題解決力、部下育成力といった技能を今後身に付けられるのか、成長し続けることができるのか」は未知数であり、これらを見極めて指導する必要があると考えていた。

 そこで脇坂課長は一計を案じ、二人を試すことにした。それはシステム作業工程の改善であり、草刈氏には「テスト工程の品質向上、効率化、改善」、小栗氏には「要件定義工程の品質向上、効率化、改善」を指示したのだった。

 結果、先輩の草刈氏は「時間がない」「周囲に働きかけたが反対された」という理由で作業工程の改善を実行しなかった。

 一方、後輩の小栗氏も同じように「周囲に働きかけたが反対された」。しかし、脇坂課長に相談した際に「新しいことは反対されるものだと考え、粘り強く進もうよ」と言われ「何か」を感じた小栗氏は、システム改善を進め周囲を巻き込むことに成功。システム工程の改善を実施することができた。

 -実行した小栗氏とできなかった草刈氏の違いは何だったのか-。今回はこれを詳細に見ていくことにしたい。