この連載では、「仕事で成長するための思考術」を扱っている。前回までは「考えない、悩まない、思考停止」について2回にわたって説明した。「成長できない10のネガティブ特性」は次の通りである。
「成長できない10のネガティブ特性」
- 考えない、悩まない、思考停止
- 動かない、実行しない、立ち尽くす
- 柔軟性がない、頑固である
- 発信できない、働きかけない、共有できない
- 人の話を聞かない、傾聴できない
- 自分本位、思い遣りがない、人間音痴
- 想像力がない、発想が貧困である
- 目標がない、目的がない、夢がない
- 計画性がない、段取りが悪い
- 状況を把握できない、どの位置にいるのか分からない
今回から2つ目の「動かない、実行しない、立ち尽くす」を説明する。
仕事における「知識と技能と経験の蓄積」
仕事で成長するには「今まで持っていなかった知識、技能、経験などを身に着け続けること」が欠かせない。このためには「仕事を通じて上司や先輩といった周囲の人に教えてもらったり、書籍やセミナー、勉強会などを活用して学び続ける」必要がある。このことは、このシリーズでも何回か述べているが再掲する。
仕事における成長とは、「それまでできなかった仕事上の必要なこと」ができるようになることだ。そして、「できないこと」が「できるようになる」には、以下のステップが必要である。
これらのステップの過程では、情報収集や意思決定、学習、トライアンドエラー(試行錯誤)を繰り返す必要がある。
このステップ3と4に着目して欲しい。ステップ3は重要だが、それ以上に大事なのはステップ4である。「聞いたり、読んだりして頭に入れる」のがステップ3、「知識を実務で試して自分のものにする」のがステップ4である。
例えば、システム開発における要件定義のプロジェクトマネジメントを考えてみよう。一般に要件定義ではいくつかのフェーズに分けて業務要求、システム要求を明らかにしていく。ここで重要なことの一つに「要求を確定させるために顧客側の課長・部長クラスなど上位職位者に関与してもらい確実に詰め切る」ということがある。
これが知識である。しかし、知識があるだけで要件定義の実務を確実に遂行できるわけがない。知識だけなら、学生でも、新人でもプロジェクトマネジメントができることになってしまうが、そんなことはあり得ない。
実務で「要求を確定させるために顧客側の課長・部長クラスなど上位職位者に関与してもらい確実に詰め切る」ことができること。これが技能化であり経験の蓄積だが、それに必要な基礎行動が「動く、実行する」ことなのだ。
このように仕事で成長するためには、「動く、実行する」ことが前提になるが、これができない人が多い。なぜできないのか。これには、あるネガティブ特性が関係している。それが「動かない、実行しない、立ち尽くす」である。