「電話を再定義する」。当時米アップルのCEOだったスティーブ・ジョブズ氏のこんな言葉とともに登場した「iPhone」、そしてその後のスマートフォンの普及――。NTTドコモがiPhoneを販売することで、国内でもフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行はますます進みそうだ(関連記事:「『ドコモからiPhone発売』で、携帯各社の競争はどうなる?」「『ドコモのiPhone』で一変する国内スマホ市場」「iPhone 5s/5cの対応バンドに見るアップルの深意、そして携帯3社の競争の行方」)。

 スマートフォンが「当たり前の存在」になるということは、一般の人が様々な場所にコンピュータを持ち込む時代が到来したことを意味する。スマートフォンは持ち歩ける機器としては高性能なハードウエアリソースを搭載しており、スマートフォン側が処理やネットワーク接続などを肩代わりすることで、これまでにない発想の連携製品なども考えられそうだ。コンピュータの遍在化によって、電話の“再定義”で生まれたスマートフォンが、今度は周辺機器やサービスなどを“再定義”する側になりつつある。

カメラの形をスマホが変えた

写真1●ソニーの“レンズスタイルカメラ”「DSC-QX100」をスマートフォンに取り付けたところ
写真1●ソニーの“レンズスタイルカメラ”「DSC-QX100」をスマートフォンに取り付けたところ
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 そんなことを思ったのは、2013年9月4日にソニーが発表した“レンズスタイルカメラ”「DSC-QX10」「DSC-QX100」を見てからだ(写真1、関連記事:スマホが“高性能”“高倍率ズーム”カメラに、ソニーがレンズスタイルカメラを10月発売)。交換レンズのような形状のデジタルカメラで、一般的にイメージされるカメラの本体部分がない。

 レンズスタイルカメラ単体でもシャッターなどはあり、カメラとして機能はする。だが、ファインダーは存在しない。スマートフォンのディスプレイをファインダーとして使い、画面タッチでシャッターを切ったり、ピントを合わせたり、といった操作が可能だ。撮影した写真はカメラ本体のメモリーカードにも保存できるが、スマートフォン側にも保存可能で、そこからSNSに投稿したり、クラウドストレージに保存したり、といったことができる。スマートフォンなくしては存在しえなかったデジタルカメラである(同社のWebページ)。

 「スマートフォンのカメラも十分進化しているので不要ではないか」。もちろんそうした声もあるだろう。実際、コンパクトデジカメ並みの性能を持つスマートフォンも登場している。だが、スマートフォンだけではどうしても物理的に難しいことがある。例えば高倍率の光学ズーム、大型のCMOSセンサーや大口径レンズの搭載などだ。レンズスタイルカメラは既存のスマートフォンと連携することでスマートフォンはそのデザイン性を損なわず、必要な時には高倍率、高画質のカメラとして機能させられるようになる。

 対応するスマートフォンはAndroid搭載のスマートフォンおよびiPhone。スマートフォン側は対応アプリをインストールし、無線LAN(Wi-Fi Direct)でレンズスタイルカメラと接続する。実際に実機を試す機会も得たが、無線LANを介しているからといってそのレスポンスはまったく気にならず、スマートフォンの高精細なディスプレイをファインダー代わりに使える点や、慣れたスマートフォンのタッチ操作で使える点はむしろ快適だった。