少し前の話題になるが、ローソンが8月末に開催したハッカソン(短期間でプログラム開発を競うイベント)である「HackaLawson(ハッカローソン)2013」は、とても魅力的だった。100人の定員に対して告知直後から応募が殺到し、早々に募集を打ち切ったほどである。数だけでなく中身も充実していた。開発された作品の中には、サービス化に向けて動いているものもある(写真、関連記事:ローソン主催のハッカソン、ユーザー視点の「ソーシャルチェンジ」アプリが続々)。

 なぜ魅力的に感じたのか、改めて振り返ってみることにした。

写真●HackaLawsonの参加者
写真●HackaLawsonの参加者
[画像のクリックで拡大表示]

経営陣からの明確なメッセージ

 ハッカソンに先駆けて行われたアイデアソンには、同社代表執行役員COOの玉塚元一氏が登場した。こうしたイベントに経営陣が顔を出すこと自体、珍しいことだが、同氏は参加者に対して明確なメッセージを送った。曰く「ローソンは、いろいろな可能性がある社会インフラだ」。開発者の活動を下支えするインフラだと宣言したうえで、発案を呼びかけたのだ。

 玉塚氏の関与はこの挨拶だけにとどまらない。聞けば、事前の打ち合わせで「POS情報も出した方がいいだろう」とし現場の協力を自ら取り付け、架空のデータながらPOS情報も活用可能なデータに加わったのだという。

「消費者視点」の打ち出し

 今回のハッカソンでローソンの関係者は「社員からは出てこないアイデアを期待する」と何度も繰り返した。一般に、同じ企業に長く務めていると社員の同質化が進み、突飛な発想が出にくくなる。仮に思いついたとしても、知らず知らずの間に「どうせダメだろう」と自らブレーキをかけてしまいがちだ。

 ところが社外の開発者にとっては、企業のエゴや制約による“大人の事情”はお構いなし。ユーザーの視点で、本当に欲しいものを発案する。例えば、コンビニ店内に設置されるトイレの検索アプリや傘の貸し出しサービスがあったが、「買い物はせず、トイレだけの利用が増えるだろう」「傘が売れなくなる」として一蹴される可能性が高い。社外にいればこそ、企業側の論理の破壊者となり得るわけだ。