「満を持したタイミングで、日本で発売することになった」。SAPジャパンの馬場渉バイスプレジデント クラウドファースト事業本部長は、2013年11月に開始するクラウド型ERP「SAP Business ByDesign」の提供を嬉しそうに話す。ユーザー企業から「いつ発売するのか」と、しつこく聞かれていたこともあったのだろう。

 SAP Business ByDesignは、欧米では既に2007年からサービスを開始している。馬場本部長は独SAPの当時のCEOから「歴史的に意味がある発表」と聞かされていた。それだけ画期的なサービスだったようで、4億行のオンプレミス版に対し、クラウド版は4000万行弱と10分の1の規模だが、会計や人事、販売など35の業務プロセスをカバーできた。両者の大きな違いは各国の商習慣や業界固有への対応だけで、既に世界16カ国の1000社超が導入している。

 なぜ、そんなに優れたサービスを日本で売らなかったのだろう。馬場本部長は、二つの理由を挙げる。一つは、基幹系システムをクラウドで実行したいという日本企業のニーズがなかったこと。もう一つは、クラウドの技術に課題があったからだという。

 SAPジャパンが指摘するように、これまで日本の大手企業はクラウド活用に慎重だった。しかし昨年から今年にかけ、グローバル化に舵を切った企業が業務の標準化やスピード、簡素化に取り組み始めたことで「グローバルERPの需要が高まってきた」(馬場本部長)。インメモリーデータベース「HANA」をベースに、クラウドの技術も進化したという。まさに今が満を持したタイミングというわけだ。