こんなに早く、第3弾の記事を書くことになるとは思わなかった──。今回の「記者の眼」は、2013年4月11日と7月18日に書いた2つのリポートの続きである。

 私は以前このコラムで「IBM辞め起業したデータ分析の三銃士、顧客のビューカードは彼らの「CMO代行業」に期待」と「IBM辞めたデータ分析の三銃士がビューカードに入り込んで5カ月、何が変わったか社長に聞いた」という2つの話を紹介した。

 内容を一言で言うと、2012年末に日本IBMをそろって退社した3人組が、ギックスというベンチャー企業を立ち上げ、「CMO(最高マーケティング責任者)代行業」という新ビジネスを始めたというものである。そしてこの無名のベンチャー企業に、JR東日本グループのクレジットカード会社であるビューカードがいきなりクライアントとしてつき、クレジットカードのデータ分析支援を始めたことを、過去2回の記事で報告してきた。

 特に2回目では、ビューカードの叶篤彦社長にインタビューし、ギックスとの協業について詳しく話を聞くことができた。

 するとこの記事が出た直後から、ギックスを創業した代表取締役CEOの網野知博氏のもとには、同じような内容の問い合わせがいくつも寄せられるようになったという。

 それは「(ビューカードでは)実際にどんな分析をしているのですか」「分析ツールや分析環境はどんなものを用意しているのですか」というものだった。かなりストレートな質問である。

 私が記事で「ギックスは400万人を超えるビューカード会員の明細データを分析している」ことに触れたため、「当社が相当すごい分析環境を持っているのではないかと思った人から、立て続けに質問が来たようです」と、網野氏は話す。

 それならば、「その問いに次の記事で応えちゃいましょうか」ということになった。それが今回の第3弾である。

 この企画には、実は私自身の反省の意味合いも込めたつもりだ。

 過去1年、ビッグデータの分析やデータサイエンティストの活躍が連日のようにメディアを賑わすようになった。私もそうした記事を何度も書いてきた記者の1人である。データ分析で成果を出している企業が現れていることや、その分析を実行しているデータサイエンティストの存在については、これまでに十分お伝えできたと自負している。

 ただし、「どうやってデータ分析をしているのか」という、いわゆる「HOW」の情報については、紹介し切れていなかったのが実情である。これが私自身の反省だ。

 ご承知の通り、データ分析は今や企業の生命線ともいえる重要事項である。どうやって分析しているかは、おいそれと口にできないという企業側の事情がある。

 それでも冒頭で紹介した読者の疑問のように、「実際にはどうやって分析しているのか?」を知りたくなるのは当然だろう。そこで今回は、あえてそこに踏み込んでみようと考えた。

数千万件のデータを分析できるツールを100万円台から買えるように

 私は2013年9月中旬、改めてギックスのオフィスを訪れた。すると出迎えてくれた網野氏と、創業メンバーの1人で取締役CTOである花谷慎太郎氏が「当社もこの9月中に、4人目のメンバーを迎えられることになりましたよ。オフィスも引っ越します」と、元気よく切り出した。CMO代行業に引き合いがある1つの証拠といえるだろう。

 ちなみに、この日オフィスにはいなかったが、もう1人の創業メンバーである取締役CMSOの田中耕比古氏には、9月上旬にITproで特集「ソーシャルリスニングで何ができるか」を執筆いただいてもいる。