今回の題名は前回書いた『「できない人」にいくら教えても「できる人」にならないのか』のもじりである。

 前回記事は、想像以上に多くの方に読んでいただいた。この場を借りてお礼を申し上げる。ただ、なぜ読まれたのか、その理由を書いた当人は今ひとつ分かっていない。

 「身も蓋もない発言」をそのまま紹介したのが良かったのだろうか。それでは柳の下のどじょうを目指し、別の「身も蓋もない発言」を紹介してみたい。今回は営業の話である。

「無理です。なぜ請けたのですか」

 営業担当者(以下営業と表記)が仕事を受注してくる。その仕事を実際に手がける技術者を集めて、仕事の内容や納期、費用などを説明する。

 説明を聞いた技術者は唖然として言う。

 「無理です。こんな仕事をなぜ請けたのですか」

 反発を見込んでいた営業はあらかじめ考えていた台詞を使って現場を説得、いや、制圧にかかる。
 
 「競合に勝つには、この条件で提案するしかなかった」

 厳しい競合に競り勝って仕事を持ってきたのだから、なんとかして欲しい。これはなかなか手強い主張である。

 条件はさておき、仕事を取ってきた事実は重い。仕事が来ない会社は倒産する。現場の技術者は社員である以上、「そんな仕事はやりません」とは言いにくい。

 商談に参加していたわけではないから、本当にその条件を出さないと勝てなかったのかどうか、技術者には分からない。

 「売り上げは立つとしても、この条件ではおそらく採算ぎりぎりか赤字になります」

 こう反論すると、営業はすかざす言う。

 「今回の案件をしのげば、もっと条件の良い次回案件を取れるはず」

 「そんなことはあてにならない、以前もそういう話でだまされた」と現場が反論しても、「大丈夫」と言われたら押し問答になるだけだ。

「契約書を見せろ」と言うのは野暮

 外資系企業の欧米本社なら「確約はとれているのか。契約書を見せろ」と言って、営業を追求するだろう。日本法人が赤字受注をしてしまい、「そんな仕事は止めろ」と言ってきた本社に、日本法人の営業が「次につながります」などど言っても通らない。

 だが、日本企業の中で「契約書を見せろ」などと言うと、その場の雰囲気が急に悪くなる。そういう追求をする人は、野暮だと陰口をたたかれる。

 現場の技術者が黙ってしまうと、営業はだめ押しをしてくる。

 「知っての通り、長い付き合いのお客さんですよ」

 外資系企業の本社なら「長い付き合い、それがどうした。次の仕事につながる保証になるのか」と突っ込むところだが、日本企業はお客とか取引先に弱い。「長い付き合い」という言葉にも弱い。