この連載では、「仕事で成長するための思考術」を扱っている。前回は、「成長するために絶えず学ぶべきことを仕事に見出す」が必要であること、「成長するために大きな要素になるのは人の行動特性」であることを説明した。

 また、筆者が考える「成長を阻害するダメな行動特性」には10の種類があり、これを改善することが「仕事で成長する」につながることも説明した。「成長できない10のネガティブ特性」は次の通りである。

「成長できない10のネガティブ特性」

  1. 考えない、悩まない、思考停止
  2. 動かない、実行しない、立ち尽くす
  3. 柔軟性がない、頑固である
  4. 発信できない、働きかけない、共有できない
  5. 人の話を聞かない、傾聴できない
  6. 自分本位、思い遣りがない、人間音痴
  7. 想像力がない、発想が貧困である
  8. 目標がない、目的がない、夢がない
  9. 計画性がない、段取りが悪い
  10. 状況を把握できない、どの位置にいるのか分からない

 「人が仕事で成長できるか、否か」は、多くの複雑な要素が影響しており、この要素さえ揃えば「確実に成長する」というものはない。ただし、筆者のこれまでの経験・研究成果から、一定の関係性は説明可能と考えている。

 成長に影響する要素は多項目が複雑に絡む「メッシュ構造」をしている。この中でも大きく影響すると筆者が考えているのは、前回も説明した「本人の行動特性」で、「人がどのような行動を取るのか」を決める本人の「思考パターン」である。

 要は、「本人の考え方、感じ方、捉え方」であり、これには良性(ポジティブ特性)と悪性(ネガティブ特性)がある。筆者が定義しているのは、成長に悪い影響を与える10のネガティブ特性に関するものである。では、一つ目の「考えない、悩まない、思考停止」から説明する。

「考えない、悩まない、思考停止」というネガティブ特性

 筆者の定義する「成長理論」における「考えない」とは「成長に向けて自分がどうすればよいかを考えない」こと、「悩まない」とは仕事での成長に関係する「上司や周囲からの指導やプレッシャーを受けても、それを深く考えず、すぐに忘れる」という行動特性を意味する。

 「思考停止」もこの二つに近いが、「考えない」「悩まない」が能動的なのに対し、「思考停止」には「周囲で発生する想定しない状況に対し、受身的に考えること、悩むことを停止する」というニュアンスがある。

 言葉はやや異なるものの、どちらにしても「成長に関することに背を向ける」という意味では全く同じである。では、これを事例で説明しよう。このエピソードは、ユーザー企業のシステム企画部門の課長である木崎氏(仮名・45歳)に聞いた話である。