今日は、2013年4月に書いた「記者の眼」の続きをリポートする。

 私は以前この記者の眼で、「日本IBMを辞めて起業したデータ分析の三銃士」の話を紹介した。3人は2012年末に日本IBMをそろって退社。ギックスというベンチャー企業を立ち上げて、「CMO(最高マーケティング責任者)代行業」という聞き慣れないビジネスに乗り出した。ギックスは営業を開始してまだ半年にすぎない小さな会社だ。

 この記事は一部でそれなりに話題となった。それはやはり、「IBM辞め起業した」というタイトルがITpro読者の目を引いたからだろう。

 代表取締役CEOの網野知博氏は、アクセンチュアと日本IBMを渡り歩き、IBMではビッグデータ分析のサービスを提供する専門組織BAO(Business Analytics & Optimization)に所属。BAOのコンサルティング部門(BAO Strategy)で統括責任者を務め上げた。網野氏には2013年6月に、ITproで「チームCMO」というテーマで特集も執筆いただいている。

 ただ、話題になったのはIBMを辞めたことだけではないはずだ。それこそ、IBMを辞めた人なら、IT業界にはたくさんいる。

 彼らがCMO代行業という目新しい商売にいち早く着目したことや、今はやりのデータサイエンティストとしての仕事ぶりに注目が集まったことも一因に挙げられる。実際、記事が出た直後から、ギックスには様々なベンダーやツール提供会社から、「データ分析で協業しませんか」という誘いの依頼が来たそうだ。

 そして、もう1つ。この無名のベンチャー企業に、早くも大手のクライアントがついたという事実が、話題になった理由の1つに違いない。今日はこの話をより詳しくご紹介しよう。

ギックスの3人を「チームCMO」として迎え入れる決断を下す

 顧客の1社は、JR東日本グループのクレジットカード会社であるビューカードだ。

 前回の記事では、「ギックスの3人にはCMOのような存在になることを期待している」と話していたビューカードの会田雅彦常務取締役のコメントを紹介した。ギックスの3人をビューカードに招き入れたのは、ほかでもない会田常務である。

写真●ビューカードの叶篤彦社長。もともとは駅舎などの建築士だ
写真●ビューカードの叶篤彦社長。もともとは駅舎などの建築士だ
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 ビューカードがギックスと契約したのは2013年2月。それからまだ5カ月ほどしかたっていないが、ビューカードには何か変化が起きただろうか。それを確かめるため、今回はビューカードの叶篤彦社長を直撃してみることにした(写真)。

 叶社長は今春、2020年度に向けての数値目標である「600万人・2兆円」の必達を公表したばかりだ。現在約420万人いるビューカードの会員を2020年度までに600万人まで増やす。同じく取扱高を現在の1兆2000億円から2兆円まで拡大する、というものである。

 「従来のような単発のマーケティング施策では、目標を達成できないだろう。自分たちに欠けているものを理解して、統合的なマーケティング戦略に基づいて行動していく必要がある」。叶社長はインタビューの冒頭で、そう切り出した。

 特にビューカードにとって大事なのは、2013年度の今なのだという。