最近、“ビッグデータ”“データ活用”“データサイエンティスト”という言葉を耳にしない日はない。それほど、IT業界ではデータアナリティックスの話で持ちきりである。大手IT企業が相次いで、ビッグデータの専任組織を立ち上げているというニュースもあるほどだ(関連記事:ビッグデータ専任組織の新設相次ぐ )。

 実は先月、政府や自治体などが提供するビッグデータである「オープンデータ」を活用するための勉強会「オープンデータ・イノベーション・カンファレンス」と、毎日の診療で蓄積される医療情報=ビッグデータをいかに活用するかをメインテーマに掲げた、第17回日本医療情報学会春季学術大会という二つのイベントを取材する機会を得た。それぞれ興味深いデータ活用の事例発表があったので、その中からいくつかを紹介したい。

電車やバスのロケーションを把握、地震時の危険度を地図表示

 オープンデータとは、国、地方自治体などが保有する公共データを、二次利用しやすい形で公開・提供すること、またはそのデータを指す。「オープンデータ・イノベーション・カンファレンス」(主催:総務省、日経BPビッグデータ・プロジェクト、後援:オープンデータ流通推進コンソーシアム、ITpro)では、いくつかのオープンデータ活用の実証事業について報告があった(関連記事1関連記事2)。

 一番興味を引かれたのが、交通データを利用したアプリだ。公共交通サービス「ドコシル」は、山手線52編成と23区内を走っている都バス車両すべての位置情報と、時刻表情報、運行情報を閲覧できる(写真1)。山手線は緑色の丸で、都バスは白丸の中に緑色の四角形があるアイコンで表示される。実際に見て驚いたのが、都バスの数の多さ。地図上のそこかしこに、白地に緑のアイコンがうごめいていて、まるで昆虫が這っているかのように見えた。普段は目の前に来た車両しか意識していないが、実際には非常に多くの車両が同時間帯に運行されているのがよく分かる。

写真1●公共交通サービス「ドコシル」の画面<br>緑色の丸が画面上をうごめく。
写真1●公共交通サービス「ドコシル」の画面
緑色の丸が画面上をうごめく。
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