今日は「未来」の話をしてみたい。しかも40年後の未来である。

 私はここ3カ月ほど、通常の取材活動と並行して、未来をテーマにした取材を少しずつではあるが進めてきた。

 というのも、2013年6月3日に開設した提言特集サイト「未来に備えよ!」の立ち上げに関わってきたからだ。日本と企業の未来を考える同サイトに掲載するコンテンツの編集が私の主な仕事なのだが、せっかくの機会なので、私自身も未来をテーマに自分で取材し、記事を書いてみようと考えた。

 私がこの間に取材した未来のテーマは、大きく3つ。「監視社会」「機械と競争」「スマホチルドレン」である。これらの話に入る前に、冒頭で書いた「40年後の未来」の話を少しだけしておきたい。

 なぜ、40年後なのか?

 「未来に備えよ!」では、6月12日に日本経済新聞社と日経BP社が共同で開催したシンポジウム「未来からの警鐘」について紹介している。今後40年の経営環境の変化を予測し、企業が何をすべきかを考えるという主旨である。

写真1●BIノルウェービジネススクール教授で、書籍『2052』の著者でもあるヨルゲン・ランダース氏
写真:北山 宏一
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 基調講演を行ったのは、BIノルウェービジネススクールのヨルゲン・ランダース教授(写真1)。40年後に当たる2052年の未来を予測した書籍『2052 今後40年のグローバル予測』の著者である。

 私は今回、詰めかけた数百人の熱心な聴衆と共に、ランダース教授の講演を間近で聞くチャンスを得た。話を聞きながら、私自身も40年後の世界を考える絶好の機会をもらった。

 ランダース教授が話した内容は来日講演記事に譲る。ランダース教授は講演と前後して、多数のメディアに登場したので、内容をご存じの人も多いと思う。より詳しく知りたい人は『2052』をお読みいただきたい。

今の小学生が50代になる40年後を想像できるか

 ランダース教授の予測で象徴的なのは「世界の人口は2040年の80億人をピークにして、その後は減少する。世界経済の成長率は鈍化し、GDP(国内総生産)は現在の成長率のままなら40年後に今の4倍になるわけだが、実際には2倍にしかならない」というものだ。

 これは貧困国でも1人の女性が生涯に産む子供の数が減り、結果、労働人口が減って、世界全体のGDPの成長が「ゆっくりになる」ことを示している。

 40年後の2052年というと、現在小学生の子供たちが50代になる時期だ。その頃、早い人はもう孫がいるだろう。経済成長がこれまでになく緩やかになる世界で、人々はどんな生活を強いられるのか。

 ちなみにランダース教授は「中国は現在の5倍リッチになる」とも予測。やはりシンポジウムで講演したプライスウォーターハウスクーパースの椎名茂社長の話も合わせて考えると、40年後に中国、米国、インドの「3大経済大国」が台頭するのは確実なのだろう。

 世界が「中・米・印」を中心に回るなかで、日本人はどんな生活を送ることになるのか。しかも日本は先進国のなかで、どこよりも早く高齢化社会に突入する。