長い渋滞にうんざりして、途中で並ぶのをあきらめ、引き返すことにした──。車のドライバーなら、そんな苦い経験が一度や二度はあるかもしれない。

 渋滞といっても、高速道路の渋滞のように、テレビのニュースで映像が流れるようなものばかりではない。身近なところでは、大型ショッピングセンターやアウトレットモール、レジャースポットなどの人気施設にある駐車場の入り口付近の渋滞。週末ともなると、長い駐車待ちの列ができるのが日常的な光景である。目的地に到着していながら駐車するまで長い時間待たされるのは、精神的につらいものだ。

 よほどのことでもない限り、こうした駐車場待ちの渋滞はテレビなどで報道されることはない。ドライバーは目的地に着いて初めて、その混雑ぶりを目の当たりにする場合がほとんどだろう。

 そして大行列と分かれば、家族連れなら子供たちは大騒ぎ、両親は着く前からへとへと、となる。お父さんだけ車に残って駐車待ちというのも、よくある話だ。

 それでも何度も行っている施設なら、休日などに駐車場待ちの渋滞が起きていることは、行く前にある程度予想できる。ただし、それが「どの程度の渋滞なのか」を具体的に確認できたら、それに越したことはない。

 現地の画像を見て「今日はいつも以上にひどい混雑だから、行き先を変えよう」とか、「今日はやめておこう」と、出発前に家族会議だってできる。それでも行くと渋滞覚悟で出かければ、前もって心の準備ができているわけで、多少は苦痛も弱まるだろう。

 これを可能にする製品が、2013年5月に発売された。カーナビ大手のパイオニアが出した「カロッツェリア サイバーナビ」の新機種である。

 大きな売り物の1つは、車載カメラで撮影する道路の画像情報をクラウドで共有するサービス「スマートループ アイ」(写真1)。多くのドライバーが画像で確認したいと思うような場所、例えば先ほどのような人気施設の入り口付近や混雑することが多い交差点、高速道路の合流地点などを全国で約5000カ所ピックアップ。交通規制が出されている場所も、「臨時スポット」として随時選択する。

 サイバーナビを積んだ車から画像は自動収集され、およそ5分前の状況をドライバーに配信する。車が特定の場所を通ると、画像を自動的に撮影してセンターに送信し、サイバーナビの利用者同士でシェアできる仕組みになっている。

写真1●「スマートループ アイ」で撮影した、人気施設の駐車場入り口付近の画像。ドライバーは順番待ちの様子を到着前に確認できる
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 もちろん、本人が望まなければ、画像の送信機能をオフにできる。

 話を冒頭の駐車場待ちに戻すと、大型施設は駐車場を付近に複数持っていることが多い。その施設に詳しい人にとっては“常識”かもしれないが、順番待ちが少ない“穴場の駐車場”が存在することがある。その様子をリアルの画像で事前に確認できたら、ドライバーは大助かりだ。行列が一番短そうな駐車場に、迷わず向かうだろう。