注目を集めている第3のモバイルOSを狙う「Tizen」や「Firefox OS」。以前執筆した当コラムの記事では、第3のOSが注目を集める理由として、米グーグル、アップル依存のリスクヘッジとしてのポリティカルな側面が背景にあることを解説した。

 一方でアプリケーションの動作環境に注目すると、両OSには興味深い技術的なポイントがもう一つある。TizenやFirefox OSがサポートする「Packagedアプリ」という新たなタイプのWebアプリだ。これまでのコンピューティングの変遷を振り返ると、このような新たなタイプのWebアプリの登場は必然と言えるかもしれない。

Webアプリの概念が広がる、これは歴史が繰り返されている?

 TizenやFirefox OSがサポートする「Packagedアプリ」とは、HTML/JavaScript/CSSファイルなどWebアプリを構成する素材にマニフェストファイルなどを加えて圧縮し、クライアント側で実行する形態だ(表1)。

表1●Firefox OSとTizenのPackagedアプリの仕様
  Packagedアプリの拡張子 Packagedアプリの中身の例 仕様
Firefox OS zip manifest.webapp(マニフェストファイル)
index.html(HTML)
main.js(JavaScript)
syle.css(CSS)
icon.png(アイコン画像)
など
W3CのSystem Application WG、Web Application WGで検討中
Tizen wgt config.xml(コンフィグファイル)
index.html(HTML)
main.js(JavaScript)
syle.css(CSS)
icon.png(アイコン画像)
など
W3C Widget Packaging Specに準拠

 これまでのWebアプリと言えば、サーバーにアクセスし、サーバーサイドで処理をした結果をクライアントのブラウザーでレンダリングするタイプがほとんどだった。Packagedアプリは、そんなサーバーサイド中心のWebアプリの概念を広げ、クライアント側の処理能力をフルに使う形になる。

 TizenやFirefox OSがWebアプリをパッケージ化する狙いは、ソースコードを審査可能な形にし、アプリを配布しやすくすることで、マーケットを機能させるという目的が一番だろう。ただこれまでのコンピューティングの歴史を振り返ると、歴史が再び繰り返されているという側面も見えてくる。