そもそもの発端は、一見ブームが過ぎたように見えるFacebookについて何かと相談を受けるという、知人のライターの世間話から始まった。それは中小企業の経営者から、「使い方を教えてくれとリクエストがくる」というもの。どうやらFacebookというのがビジネスに効くらしい、人脈を広げて会社の存在をアピールするのにいいらしい、と言われて、その気になる経営者が結構いるらしい。「登録の方法とか、一般的な使い方を教えてあげて、友達になってあげて一通り使えるようになっても、だいたいラーメンの話ぐらいしか書き込みがなくて、半年ぐらいで何もしなくなる」というパターンが多いのだそうだ。

写真●「まいあめ工房」のFacebookページ
写真●まいあめ工房のFacebookページ
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 そういった失敗例はいくらでもあるが、では成功例はどれくらいあるのだろうか? 大企業がFacebookを使ってマーケティングに役立てている事例は数多く紹介されているが、中小企業や個人などがFacebookをビジネスに役立てている事例はあまり見たことがない。そもそも、人材も資金も豊富にある大企業の事例に見られるノウハウは、中小企業の案件にはあまり役に立たない。条件が違いすぎるのだ。

 中小企業のFacebook成功事例をまとめて、そこにあるコツやノウハウを紹介できたら少しは世の中の役に立ちそうだ、ということで、事例の発掘からはじめて1年がかりでまとめたのが、この6月に当社から出版した「小さな会社のための成功するFacebookマーケティング」という本だ。ライターの高橋浩子さんと、Facebookページを含めたWeb関連の制作会社システム・アシストを経営している田井中友香さんに執筆してもらった。「5つの成功事例と1つの失敗事例から見えてくるFacebookを使いこなすコツ」という長い副題にもあるように、5つの成功例と典型的な失敗例を立て直した事例を中心に構成している。

Facebookは情報共有の場と割り切る

 5つの事例は、LEDサインメーカー、読書コミュニティ、アメの製造販売、画材の製造輸入販売業、工作機械用の精密スイッチメーカーと見事にばらばらで、共通するのは中小企業であることと、Facebookページをビジネスに役立てていることだけだ。Facebookページのビジネスへの利用の仕方もその業種によって違うのだが、Facebookページが直接、売り上げにはつなげていないこと、継続してFacebookを運営する仕組みをうまく用意していることは5つとも同じで、どうやらこの2点が成功するコツのようだ。

 特に強く印象に残っているのが名古屋の「まいあめ工房」だ。「組みアメ」と呼ばれているアメを製造・販売する会社である。「組みアメ」は「金太郎アメ」の「金太郎」の部分を文字や、さまざまな絵柄に置き換えたオリジナルのアメで、ほぼ手作業で作っている。「おめでとう」といった文字や絵柄を組み合わせたアメは、個人の贈り物はもちろん、企業イベントの引き出物として好評だ。注文はネットで行われ、2~3カ月先まであっと言う間に注文が埋まってしまう人気商品である。

 まいあめ工房では、Webサイトで注文を受け、Facebookページで「いいね」のファンを集め、ブログで実際の注文客とのやり取りを掲載して注文サイトへと誘導している。まいあめ工房を運営するナカムラの中村貴男社長は「Facebookページから直接、注文サイトに誘導することはしない。Facebookで商売の話をするのは場違い。あくまでも情報共有の場で、それ以上でも以下でない」と言い切る。