世の中には良き出会いもあれば悪しき出会いもある。初対面で意気投合し多年にわたって仕事をする仲になることもあれば、揉め事の場にお互い居合わせてしまい腹を割って話せず、それ以来ずっと疎遠になることもある。
残念ながら、ネットイヤーグループの石黒不二代社長兼CEO(最高経営責任者)との出会いは後者であった。10年以上も前になるが、石黒氏に初めて会った時のことはよく覚えている。ネットイヤーの会議室で、石黒氏と社員2人が筆者の上司そして筆者と対峙した。机をはさんで向かい合っただけでなく、石黒氏らの主張とこちらの主張が真正面からぶつかってしまい押し問答を続けた。
その時の石黒氏や社員の表情や口調を今でも思い出せる。こう書くと記憶力に優れているようだが、そうではない。ある特定の状況や発言は30年前であろうが覚えているものの、日常のことはすぐ忘れ、昨日何をしたかも思い出せない。
ネットイヤーとのやり取りは平行線のまま終わった。それからしばらくして、いわゆる落としどころを見つけ一件落着になったが、筆者にとってネットイヤーの敷居は高いままだ。その後、石黒氏に何回か会う機会があったがどうにも話しにくい。
石黒氏はさっぱりした性格らしく、初対面の件を気にしていないように振る舞ってくれたが、筆者は「特定の状況や発言」を忘れられないので気になってしまう。もっと良き出会いをしておれば結構話が合って良好な関係が築けたのではないかとか、ひょっとすると2人は赤い糸で結ばれていたのではないかとか時折妄想するが、後の祭りである。
52歳からでも「全く遅くはありません」
その石黒氏が、『入社という節目に「人生を棚卸し」してみる、エッセイを書いて目標を再確認しよう』と題した記事を、4月上旬に公開した『3年で辞めないための「新入社員へのアドバイス」』というITpro特集に寄稿していた。直接会うのは気がひけるが文章ならすぐ読める。同記事は、次のような書き出しであった。
新入社員のみなさんに、ぜひトライしてもらいたいことがあります。それは、入社という人生の1つの節目に立った今のタイミングで、自分のこれまでの人生を振り返り、「棚卸し」をするのです。本当は、学生時代に棚卸しできれば一番よかったのですが、今からでも全く遅くはありません。5月の連休など時間がある時に、よく考えてみてください。
これまた妄想かもしれないが、石黒氏は筆者に向けて書いたのではないか。上記の一文を筆者は次のように読んだ。
谷島さんに、ぜひトライしてもらいたいことがあります。それは、人生の1つの節目に立った今のタイミングで、自分のこれまでの人生を振り返り、「棚卸し」をするのです。本当は、もっと若い頃に棚卸しできれば一番よかったのですが、今からでも全く遅くはありません。5月の連休など時間がある時によく考えてみてください。
新入社員どころか入社28年目の52歳であるが、諸事情により「人生の1つの節目に立った」という気がする。前述の通りいくつかの情景は覚えているが、それ以外は綺麗さっぱり忘れているので「これまでの人生を振り返」ったことはほとんどない。目下取り組んでいる仕事で、5月の連休は潰れてしまう。今すぐ実施するしかない。
助言に基づき棚卸しをした結果を石黒氏の文章を引用しつつ紹介する。