この連載では、「ダメに見せない説明術」を扱っている。前回までは、六つ目のダメ説明である「理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙」をテーマに取り上げた。10のダメ説明は以下の通りである。
「10のダメ説明」
- 長い、細かい、テンポ悪すぎ
- 論点不明、主旨不明、結論なし
- 抽象的、具体的でない、表面的
- 理由がない、何故?が満載、説明が不足
- 独りよがり、自分視点、自己中心
- 遅い、ぎりぎり、時間なし
- 理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙
- 先を読まない、場当たり的、その場しのぎ
- 思想がない、考えがない、自分がない
- 反論する、否定する、対立する
今回から、八つ目の「先を読まない、場当たり的、その場しのぎ」をテーマとする。
将来を推測せず短絡的な判断を繰り返していると窮地に陥る
筆者の指導する説明術において「先を読まない」とは、「将来に向けて起こりそうなことを予想しない」という行動特性を指す。筆者の経験では、意図的に「先を読まない」人よりも「先が読めない」人のほうが多いと感じている。
また、「場当たり的」とは「先を考えず、その場その場において全体合理性のある判断をせず、その場から抜け出すためだけの判断行動をする」ということを指す。これは経験上、「先を読めない人」に多く見られる特徴だと思っている。
さらに、「その場しのぎ」とは「今の危機的、困難状況から逃れられればそれでかまわず、先に発生するさらに過酷な結末のことは考えない」という楽観的な行動特性を指す。本質的には「先を読まない」「場当たり的」と同じで、表現方法が異なるだけだ。
例えば、上司や上長に指示された仕事のアウトプットを催促され、「3日でできるよな?」と言われた際に、その追い詰められた状況(自分に不都合が発生している状況)で、「大丈夫です」「もちろんです」「可能だと思います」と答えてしまうような行動特性である。
もちろん、3日でできる当てがあるなら、このように言っても何も問題ない。ビジネスパーソンとして約束を守る、役割を果たすという行為であり、評判が落ちることはない。
しかし、3日後にできる当てがない、もしくはできると思ったのに結果的に3日後できなければ、「先を読まない、場当たり的、その場しのぎ」と周囲に悪い評価を下されることになる。約束を守れない、役割を果たせない人ということになるのだ。
このように、「先を読まない、場当たり的、その場しのぎ」の説明をする人は、それが著しく評判を下げる「ダメ説明」につながることを自覚した上で、早く矯正する必要がある。
もしも、いつまで経っても矯正されないままであれば、その人の上司や上長は、「部下に足を引っ張られるリスクがある」ことを強く意識し、組織を維持し、業績を上げるために速やかに指導してほしい。それが上司や上長の役割であると筆者は考えている。