「ビッグデータの活用を全社的に推進するうえでは、システム部門が主導権を握るべきだ」。こう聞けば「いやいや、やはり利用部門がリードするべきだろう」と反論する人はまだ多いかもしれない。

 正直なところ、筆者もこの結論に至ったのはつい最近だ。

全社的な視点を持ち、新たなITに意欲的に取り組めるのはシステム部門

 発端を切り開くのが利用部門だとしても、システム部門の積極的な活動を抜きにして、全社的なビッグデータ活用体制を描くことは困難――。これが冒頭の提言が意味するところである。

 この提言は、日経コンピュータ2013年4月4日号の特集記事「ビッグデータの『初動』3原則」の中の「原則1」として採用した。舞台裏を明かすと、実は特集記事の制作に当たり、「原則1」にはほかにも候補案があった。しかし、取材した複数の識者が発した以下のコメントが、この提言で記事を書こうと筆者らの背中を押した。

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 「コストを抑えながら成果を出し続けるには、ITやデータ管理に関する知見を備えたシステム部門の主体的な関与が不可欠だ」(アクセンチュアの工藤卓哉アナリティクスインテリジェンスグループ統括シニア・プリンシパル)。

「最初は利用部門が独自に分析ツールを活用し始めた米国企業でも、次の段階ではコストの最適化や全社連携のために、システム部門が中心的に活動するケースが増えている」(SAS Institute Japanの北川裕康マーケティング&ビジネス推進本部長)。

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 システム部門が主導権を握る、と言っても、ビッグデータ活用のために既存の基幹システムやRDBシステムを高速化するといった裏方程度の取り組みを指しているわけではない。例えば、今回取り上げたパナソニックのシステム部門は、ビッグデータ時代に向けて「分析企画」「分析推進」「データ管理」という3つの役割を描いており、まずはデータサイエンティストの育成から着手している。

 そうした事例などを踏まえて、筆者なりにイメージしている「システム部門がビッグデータの活用推進を担える条件」は、主に3つある。

(1)全社的な視点からデータやシステムの充実に積極的に取り組むこと。例えば、社内のデータを棚卸ししたうえで、定義を標準化して組み合わせやすくする、特定の利用部門で成功したデータ活用プロセスを他の利用部門へも横展開しやすいようにITでパターン化する、といったことに前向きに取り組む

(2)データの蓄積や分析関連で、新たなITツールの導入に積極的に取り組むこと。Hadoopのファイルシステムを活用した安価なストレージシステムの構築はもちろん、非構造化データに関わるNoSQLやテキストマイニング、機械学習に関わるR言語やMahout、といったツールの活用支援や、安価かつスケーラビリティに優れたクラウドサービスの活用にも目を配る

(3)データサイエンティストもしくはデータサイエンティストに準ずる、統計的なデータ処理をある程度理解できる人材を抱えていること