2012年度の携帯電話接続料(音声)が出そろった(表1)。携帯電話接続料とは、携帯電話網を利用した際に他の通信事業者が支払う料金のこと。例えばA社の携帯電話からB社の携帯電話にかけた場合、A社がB社の携帯電話網を使うことになり、A社はユーザーから徴収した通話料の一部をB社に接続料として支払っている。

表1●携帯電話接続料(音声)の推移
  2012年度 2011年度 2010年度
区域内 区域外 区域内 区域外 区域内 区域外
NTTドコモ 0.067円/秒
(区分廃止)
0.068円
/秒
0.082円
/秒
0.087円
/秒
0.105円
/秒
KDDI(au) 0.082円
/秒
0.104円
/秒
0.093円
/秒
0.116円
/秒
0.104円
/秒
0.128円
/秒
ソフトバンクモバイル 0.082円
/秒
0.095円
/秒
0.099円
/秒
0.116円
/秒
0.127円
/秒
0.147円
/秒
最小と最大の格差 1.22倍 1.55倍 1.46倍 1.41倍 1.46倍 1.4倍

 接続料は設備費用(原価+適正利潤)をトラフィック(通話量)で除算することで算出しており、事業者間の格差がかねて問題となっていた。「ソフトバンクモバイルの接続料が他社に比べて高く、値下げ原資に使われているのではないか」といった指摘だ。

 2009年には総務省の公開ヒアリングでNTT東日本の江部努社長(当時)とソフトバンクモバイルの孫正義社長が激しい舌戦を繰り広げた(関連記事:接続ルール公開ヒアリングでソフトバンクとNTT東日本が激論)ほか、2011年にはNTTドコモとソフトバンクグループが互いを相手取って紛争処理委員会にあっせんを申請する事態にまで発展した(関連記事:携帯接続料めぐり、ドコモとソフトバンクが衝突)。

 両者の争いは「NTTグループ vs ソフトバンクグループ」の様相を呈していたが、ようやく解消しつつある。総務省が「モバイル接続料算定に係る研究会」を設置して接続料の適正性や透明性、公平性を高めるための算定ルールを議論し、2月に報告書案をまとめたからだ。表1の接続料も同報告書案の方針を踏まえたもので、格差の完全な解消とまでは言えないまでも、かつてのようなピリピリとした雰囲気はなくなった。

 一方、その代わりというわけではないが、パケット接続料が大きな課題として浮上してきた。パケット接続料とは、携帯電話事業者から設備を借りて独自のサービスを展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)向けの「貸し出し料金」のことだ。

 上記研究会でも算定方法の考え方について議論したが、報告書案では「事業者間で意見が一致せず、さらなる調査・検討が必要と考えられるため、検討のポイントを指し示すにとどめた」。「報告書骨子案」から「報告書案」に至る過程で、目を疑うほどの「ちゃぶ台返し」も起こった。以下では、これから議論が紛糾しそうなパケット接続料問題について整理しておきたい。

日本通信の「欠席裁判」のような状態だったが…

 研究会におけるパケット接続料の議論を巡っては、当初から不穏な空気が流れていた。研究会では通常、関係事業者へのヒアリングを実施するが、MVNOの先駆けである日本通信がこれを拒否したのだ。日本通信は2007年11月の総務大臣裁定を経てNTTドコモとの相互接続を勝ち取った最大の功労者であり、同社へのヒアリングなしで進めることには違和感があった。

 日本通信がヒアリングを拒否した理由は明快で、接続料の算定方法を巡ってNTTドコモと係争中だからだ。