「一般家庭がデータセンターになる」---そう語るのは、仏ViFibのJean-Paul Smets氏。同社は、家庭などに置いた多数のサーバーBOXを統合して「仮想データセンター」として提供するクラウドサービスを提供している。

 果たして、あなたの家がデータセンターになる日は来るのだろうか。

家庭のサーバーBOXを束ね仮想データセンターに

写真1●家庭などに設置する「SlapOS BOX」
写真1●家庭などに設置する「SlapOS BOX」
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写真2●ViFibのJean-Paul Smets氏
写真2●ViFibのJean-Paul Smets氏
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写真3●ある家ではSlapOS BOXが植木の裏に放り込まれていた
写真3●ある家ではSlapOS BOXが植木の裏に放り込まれていた
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 ViFibの仕組みはこうだ。同社は、光ファイバーを引いた家庭などに、「SlapOS BOX」(写真1)と呼ぶサーバーボックスを設置する。設置した家庭には、設置・回線使用料を支払う。SlapOS BOXには、オープンソースの分散クラウドプラットフォーム「SlapOS」がインストールされており、「別々の場所に設置された多数のSlapOS BOXを、あたかも1個のデータセンターのようにIaaSやPaaS、SaaSのプラットフォームとして使用できる」とSmets氏は言う。

 ただしViFibは、このサービスを普通のクラウドサービスとして提供しているのではない。災害時など非常時のためのバックアップサービスとして提供する。同社ではこれをDRaaS(Disaster Recovery as a Service)と呼ぶ。

 家庭にはバックアップ回線も非常用電源装置もないので、個々の可用性はデータセンターとは比べるべくもない。しかし「SlapOSは、複数のマシンでデータを複製して持つことができる。国や地域、通信事業者をばらばらにして分散することで、同時にダウンする可能性を低くできる。災害時のバックアップとして適している」(Smets氏)とViFibは主張する。

 ViFibの親会社で、SlapOSの開発を支援している仏Nexediによれば、アフリカのコートジボワールの内務省は、3万ユーザーに10のミッションクリティカルなアプリケーションを提供するために、SlapOSを採用したという。コートジボワールのシステムは政府のデータセンターで動いており、一般家庭ではないが、データはSlapOSの機能により冗長化され分散して格納されている。コートジボワール内務省の担当者は、「オープンソースであるためソースコードが完全に監査できること、分散クラウドにより非常時の可用性が高いことを評価し選択した」とコメントしている。

 Nexediは、ERP(統合業務パッケージ)である「ERP5」を開発し、オープンソースソフトウエア(OSS)として公開している。欧州の中央銀行でも採用されているという。Smets氏は「OSSがベンダーロックインからユーザーを開放したように、SlapOSでクラウドベンダーからの支配からユーザーを開放したい」と意気込む(写真2)。

 Smets氏は1枚の写真を示した(写真3)。それは彼らがある家庭で見た、SlapOS BOXが置かれた場所だ。その家では、SlapOS BOXを植木の裏側に放り込んでいた。「これでもSlapOS BOXはちゃんと動いている。冗長化しているから、個々のサーバーの信頼性が低くても問題ない」と、Smets氏は言う。