1月中旬、NTT西日本研究開発センタで講演を行った。昨年11月、このコラムに書いた「フレッツの『次』が欲しい」を読んだ方から依頼されたのだ。研究開発センタは新しいサービスを開発する部門で、電話局として建てられた古いビルにあった。

写真●NTT西日本研究開発センタで行った講演の様子
写真●NTT西日本研究開発センタで行った講演の様子
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 電話局には独特の匂いがある。おそらくケーブルの被膜に使われるプラスチックの匂いだと思うのだが、久しぶりにその香りをかいで懐かしかった。講演会場は元々交換機室だったそうで、太い柱がたくさん立っていた。(写真

 講演後の質問で、無線LAN(Wi-Fi)の使い方に関するものがいくつかあった。Wi-Fiはインフラとして使うべきものではなく、光ファイバーやLTEといった「本当の」インフラに端末を接続するための「コネクター」と考えるべきだ。今回は「Wi-Fiコネクター論」について述べたい。

公衆無線LANへの過剰な期待

 2011年から現在に至るまで、Wi-Fiを使った公衆無線LAN(ホットスポット)が注目されている。スマートフォンによって激増した携帯網トラフィックを固定網へオフロードする手段として期待されたのだ。コンビニをはじめとする流通業の店舗や飲食店などに10万単位のホットスポットが設置された。

 だが、ここにきてWi-Fiへの期待は過剰ではないかと筆者は感じている。実際に千数百カ所のホットスポットを自分で運用してみると、トラフィックがあまり多くないことが分かる。比較的規模の大きな店舗でさえそうなのだから、コンビニのような業態ではもっと利用が少ないだろう。オフロードの効果がさほどあるとは思えない。

 空港ラウンジやコーヒーショップのように顧客の滞留時間が長く、スマートデバイスなどを座って使えるところではホットスポットの価値が高い。ただし、そんな場所でもWi-Fiの速度がLTEより劣るようでは利用者がわざわざLTEからWi-Fiに切り替えて使うとは思えない。LTE導入前にホットスポットが普及した韓国と違い、LTE人口カバー率100%を目前にした日本でオフロード効果の低いホットスポットを増やす理由は見当たらない。

 トラフィックの多いエリアでもスモールセルの導入が進むことで、Wi-Fiの必要性は少なくなるだろう。