「ここまでやっているのか」というのが正直な感想だ。もちろん、あきれているのではなく、ちょっとした衝撃、うれしい驚きを得たという感覚だ。

写真1●福井県鯖江市の政策経営部情報総括監である牧田泰一氏(撮影:中村 宏)
写真1●福井県鯖江市の政策経営部情報総括監である牧田泰一氏
(撮影:中村 宏)
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 これは、2013年2月5日・6日の両日、東京・目黒で開催された「都道府県CIOフォーラム」の第10回春季会合で、福井県鯖江市の政策経営部情報総括監である牧田泰一氏の講演を聴講した際に感じたもの(写真1)。鯖江市はオープンデータを市の重要施策として掲げ、積極的な取り組みを進めてきた、日本を代表する“オープンデータシティ”なのである。

 オープンデータとは、統計情報などの各種行政データを、コンピュータで再利用可能な形式で公開することを指す(関連記事:広がる「オープンデータ」活用)。

政府より進んだ取り組みを推進

 ちなみに同フォーラムは、全国47都道府県の情報化統括責任者(CIO)または情報化推進担当責任者(CIO補佐官、情報政策課長など)がメンバーとなり、日経BPガバメントテクノロジーが事務局として企画・運営に携わっている。2003年の設立から年2回のペースで全体会合を重ね、今回で20回目を迎えた。なぜ市町村の担当者が都道府県の会合に呼ばれたかと言えば、それだけ先進的な事業を実施しているからにほかならない。

 なお、国レベルでのオープンデータへの取り組みは、2012年から政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)で、本格的な検討が始まったばかり。2013年度予算案には、府省別のIT投資の進捗や評価を可視化するWebサイト「ITダッシュボード」の構築費用が計上されている。

 このイベント全体の様子はレポート記事にまとめて、「日経コンピュータ」4月4日号に綴じ込む形で発行される「日経BPガバメントテクノロジー2013年 春号」と、Webサイトの「ITpro 電子行政」に掲載する(4月中旬を予定)。しかし、記事中では鯖江市の取り組みに関して概略しか触れることができなかったので、ここで紹介させていただきたい。

オープンデータシティを宣言

 福井県鯖江市は人口7万人弱で、面積は84.75平方キロメートル。有名なのは、なんと言ってもメガネフレーム。日本の生産高の90%以上を生産しており、就業人口の6人に1人が眼鏡関係の仕事をしているという。

 筆者は実際、鯖江市に出張して宿泊したことがある。福井市の中心街から、のんびりと市街電車のような私鉄にゆられて移動した。途中に「サンドーム福井」という体操競技のワールドカップを開催した施設があるほかは、田んぼや畑の続くのどかな光景が続いていて、小高い丘の裾から林立するガラス張りの建物が突然視界に飛び込んでくる、などというカリフォルニアのようなことは起こらなかった。あとは夕食に食べた蕎麦が、とても美味だった記憶がある。