政府は2013年3月1日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」、いわゆるマイナンバー法案を閣議決定し国会に提出した。一部報道によると、与党は税制改正関連法案などとともに3月末までの年度内の成立を目指して野党に協力を求めていくようだ。

 社会保障と税に関わる番号制度を規定するマイナンバー法案は、民主党政権下の2012年2月に国会に提出されたものの、与野党間の攻防のあおりを受けて審議入りできず、昨年末に時間切れで廃案となった。今回の新法案は、民主党政権下での1年前の旧法案をベースとしながらも、民自公3党が協議してきた修整内容を反映した形になっている。新法案は旧法案と比べて、どこがどのように変わったのか。ポイントとなる点を見ていこう。

番号の利用開始は1年遅れの2016年1月

 政府が想定する導入スケジュールは、当初計画のちょうど1年遅れとなる。今国会で法案が成立した場合、2年後の2015年秋ころに住民へのマイナンバーの通知を始め、2016年1月から年金に関する相談・照会、税の申告書・法定調書などへの記載、災害時の要援護者リストへの記載から利用を開始する。同時に個人番号カードの交付も始める。

 マイナンバーの利用開始から1年後の2017年1月には、マイナンバーに対応付けられた個人情報を国の機関間で連携させるための「情報提供ネットワークシステム」の運用を始める。同じタイミングで、各個人が自身の情報がどのように行政機関で利用されているかをインターネット経由で確認するための仕組み「マイ・ポータル」も稼働させる。市町村など住民情報を多く抱える地方自治体が情報提供ネットワークシステムを介した情報連携に加わるのは、2017年7月をめどとしている。

 マイナンバー法案の条文は、新法案では全77条となり、旧法案の全72条よりも少し増えた。目につくのは、総則に当たる部分で、国と地方自治体の責務規定を追加したこと(第4条・第5条)。また、国・地方自治体の番号利用の施策について事業者に対し協力の努力義務も定めている(第6条)。

通知カードやマイ・ポータルを明文化

 市町村長がマイナンバーを住民に通知する手段としては、「通知カード」を用いることが明記された(第7条)。旧法案では「書面」とだけ記載されていたが、自民党などが全国民への配布を前提に安価な紙製のカードを配るべきと主張していたことを反映したものだ。通知カードには、基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)とマイナンバーのほか、総務省令で定める事項が記載される。カードの様式や材質は総務省令で定める。

 本人が申請すれば、通知カードとの交換で、ICチップを内蔵した「個人番号カード」が交付される(第17条)。一方、個人番号カードの交付を申請しない人は、引っ越し時の転入届などの際には通知カードの提示を求められるほか、記載事項に変更があった場合や紛失した場合に市町村に届け出る義務がある。通知カードはマイナンバーの単なる通知書にとどまらず、公的な意味合いを持つことになる。

 旧法案では言及がなかったマイ・ポータルは、新法案の附則第6条(検討等)で「情報提供等記録開示システム」の名称で明記された。法律施行後1年をめどに設置し、年齢・身体的な利用制約要因に配慮しながら活用を推進する。さらに、利便性向上の観点から民間利用も視野に入れて、マイナンバー法以外の法律に基づく本人確認、有用情報のプッシュ通知、複数宛先への書面一括提出への応用を検討することとした。マイナンバー法以外の法律としては、たとえば金融機関での口座開設・保険加入時に本人確認を求める犯罪収益移転防止法などを想定している。

 民間利用を視野に入れた記述としては、同じ附則第6条で、マイナンバーの利用と、情報提供ネットワークシステムによる情報提供の範囲・情報種別についての記載もある。法律施行後3年をめどに検討し、必要と認める場合は国民の理解を得ながら必要な措置を講じるとしている。旧法案では検討の時期を法律施行後5年をめどとしていたので、法律施行が当初計画より1年遅れるものの、民間利用の検討開始のタイミングは結果的に1年前倒しになりそうだ。