先日東証1部上場のA社で、運用・保守のコストカット方法について尋ねた。

 A社の情報システム担当者は「ネットワーク機器の保守契約を切ってしまうことでしょうか。情報システムはたとえ止まってしまっても、業務が完全にストップしてしまうことはありません。機器に障害が発生したときは、予備の機器を購入済みなので、機器を交換するだけですぐに復旧できます」と答えた。

 同社は既に、国内数十拠点をつなぐWANサービスをIP-VPNからエントリーVPNに切り替えることで、ネットワークの通信料を2割以上削減している。これ以上運用コストを削減するならもう保守料金に手をつけるしかない、という感じでこう答えてくれた。

 日経NETWORKでは、3月号の特集「運用・保守のダイエット」で、企業の情報インフラにかかる運用・保守業務における費用や手間を削減する方法をまとめた。この特集の取材のとき、A社のコメントにあるコールドスタンバイや保守契約を切ることについて、複数のインテグレーターに感想を聞いた。

コールドスタンバイはもはや標準

 「コールドスタンバイが標準仕様になりつつある」――こう話してくれたのは、インテグレーターB社の担当者だ。コールドスタンバイとは、“電源を入れない”状態で保管する予備の機器を指す。“電源を入れた”複数の機器を同時につなぎ、STP(Spanning Tree Protocol)やVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)といった冗長化プロトコルで、機器が1台故障してもネットワークが切断されないように組むホットスタンバイの冗長化構成より、コールドスタンバイのほうが標準的だというのだ。同じような意見は、別のインテグレーターからも聞いた。
 
 コールドスタンバイが主流になった理由は、大きく3つある。

 1つめは、万が一障害が発生したとき、ホットスタンバイのほうが、コールドスタンバイより復旧に時間がかかることが多いという点だ。複雑な構成になっている分、問題の切り分けや復旧時の作業に時間かかることが多いのが理由だ。

 2つめは、冗長化プロトコルが正常に働かず、切り替わらないことがある点だ。冗長化プロトコルは、機器同士が通信を行うなどの方法で、1台がダウンした場合別の機器にトラフィックが切り替わる。しかし、応答は返せても処理機能がほとんど働いていない「半死」状態の場合、ダウンしていると認識されず、別の機器にトラフィックが切り替わらないことがある。こうなると、障害の発見が遅れやすい。

 3つめは、保守契約の料金を抑えやすくなる点だ。コールドスタンバイであれば、電源を入れない予備の機器について、オンサイトサポートが付かない低料金のセンドバック契約などで済ませることができる。