富士通が4年ぶりに最終赤字に転落する。合計1万人近い人員の削減・転籍を含めた構造改革を実施するのに伴う特別損失1700億円を計上した結果、2012年度は950億円の純損失になる(表)。

表●富士通の業績推移(単位は億円)
07年度08年度09年度10年度11年度12年度(見込み)
売上高533084692946795452844467543700
営業利益2049687947132510531000
当期純損失481▲1123930550427▲950

 山本正已社長は2月7日の経営方針説明会で「国内ビジネスは堅調に推移したが、パソコンやデバイス、海外事業が悪化した」とし、早急に収益改善を図るV次回復の計画を立てたと話す(関連記事)。

 山本社長の考える姿は、テクノロジーをベースにしたソリューションサービス企業だ。具体的には、収益性が悪化している半導体などのデバイスソリューション事業と、パソコンや携帯電話などのユビキタスソリューション事業の領域を絞り込み、代わりに経営資源をテクノロジーソリューション事業に振り向けて、垂直統合型のビジネスモデルを作り上げることのようだ。

 その点は12年度の営業利益見込みからも見て取れる。ハードウエアやソフトウエア、ネットワーク、SI(システムインテグレーション)サービスなどから成るテクノロジーソリューション事業が1800億円の黒字なのに対し、ユビキタスソリューション事業の黒字はわずか200億円、デバイスソリューション事業に至っては120億円の赤字である。

 実はこの収益構成は、以前から変わっていない。つまり、テクノロジーソリューション以外の事業収益がどの程度プラスになるかマイナスになるかによって、富士通の業績は浮き沈みするわけだ。

3年前と同じ内容の事業戦略に疑問

 だが、今回の構造改革計画を聞いたある富士通関係者は「この3年間、いったい何をしていたのだろうか」と不思議がる。10年4月に社長に就いた山本氏はその年の経営方針説明会などで、今回とほぼ同じ内容の事業戦略を発表していたからだ。

 しかも、「守りから攻めに転じる」としたのに、大きく成長するための種が育っていないように思える。売上高は下がり続けており、07年度のピーク時に比べると、12年度見込みは1兆円近い減収の4兆3700億円になる。

 経営陣は「富士通の強みはテクノロジーにある」と認識しているはずだ。山本社長も2年前、「世の中に先行したテクノロジーやサービスを提供できなければ、富士通の未来はない」と話している。

 だが、売り上げの70%近くを占めるテクノロジーソリューション事業は、12年度に07年度比で3000億円も落ち込みそうだ。ある役員は「為替によるものだ」と説明するが、それを加味したとしてもせいぜい横ばいだろう。